遠征編5
□No.86
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―シンオウ白銀邸―
辺りが茜に染まる夕暮れ時…
縁側から伸びる夕日の明かりが
襖の開いた部屋を僅かに照らす…
その薄暗い部屋には、静かに目を閉じ瞑想をする少年の姿があった…
『……ヒスイ……』
ヒスイ:「Σ……!」
突然脳裏から聞こえた声に、ヒスイは目を閉じたまま反応した…
『聞こえる…?』
自分にテレパシーで話し掛けて来たこの人物を、ヒスイはすぐ誰だか察した
ヒスイ:「((ついに…出所ですか……リンドウ…))」
『……便利だよね…浅縹家は…
こうして今刑務所にいる僕と…どこかしらにいるヒスイが会話出来るんだから…』
ヒスイ:「((……出所したら……帰って来るのでしょう…?))」
『…ああ………でも…帰ったら…僕は篭の鳥だね……』
ヒスイ:「((当たり前です……
あなたは浅縹の名を傷付けた…まだ幸いにも世間には知られてませんが…
その罪は一生掛けても償わなければ……))」
一族を担う者として、その責任は一般の何倍も、のしかかって来る…
それをヒスイは言葉に込めた。
『……誰も分かってくれやしないんだね…原因は……まぁ、分からないか……』
しかしリンドウから返って来るのは、自分には責任は無い…と言う否定の言葉…
ヒスイ:「((…原因など…自分自身意外に何もありません…))」
明確な理由を述べない辺り、原因と言う言葉も、ヒスイからしてみれば、変な言い訳にしか聞こえなかった…
『……そうか……とりあえず、帰る前に…僕には詫びなくてはならない子がいるから……』
ヒスイ:「((…詫びる…?
Σいけません!真っ直ぐ帰って来なさい…!))」
リンドウの言う人物が誰なのか察したヒスイの眉間に、ギュッとシワが寄る
『…いやヒスイ…これは僕がやらなければならない事だ……』
ヒスイ:「((何を言って…!
………リンドウ!?))」
ふと脳裏からリンドウの気配が消え、
ヒスイは目を開けた…