銀魂


□今、過去
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夜中の寝静まった町の一部に、私が住む家はある。そして、その家の隣に山崎退の家はある。ガラッ、と窓を開ける音がしたから私も窓を開けると屋根上にひょい、と飛び乗った退の姿が見えた。私達の家はすぐ側にあって、手をのばせば触れ合える距離にある。




「何してるの?」


「眠れなくて」


「そう、」





ひんやりとした空気が部屋に入り込む。彼は高い所が好きだと言った。何故だかは本人も分からないらしいが高い場所が好きなのだ、と昔聞いたことがある。




「こっち、来る?」


「イイの?」


「来れるなら」


「大丈夫だよ。このくらいは」





少し恐怖を覚えながらも、ひょい、と飛んだ私は見事に退の部屋にダイブした。そして、退が屋根に登るのと同じ様に屋根に上がる。空には星が輝いていた。





「空、きれい」


「うん、珍しいよね」


「退さ、寝不足?」


「なんで?」


「目の下が黒い。パンダみたい」


「え、」


「嘘。でも、パンダになりかけてる」


「…忠告ありがとう」



私が冗談を言うと退は渋い顔をして、眉をひそめた。故にいう苦笑いだ。退はゆっくり体を倒して寝そべりながら空を見た。私も合わせて空を見る。退は相変わらず浮かない顔をしていた。





「退さ、何かあった?」


「なんで?」


「眠れない、って…悩み事でもあるのかなぁと思って」


「そんな事ないよ」


「嘘」


「なんで?」


「今、目閉じた。退が嘘つく時って目閉じるんだよ」


「幼なじみってのは凄いね」


「侮らないで」






退は顔を合わせない。未だ目を閉じている。(せっかく星が綺麗なんだから目くらいあけたらいいのに、ってそんな問題でもないか)
でも、やっぱり退には悩み事があるらしい。それも深い深い悩み事。






「言ってみてよ。目、閉じてていいからさ」


「ん〜…」


「ほら、」


「俺さ、昔…って言うか前世の夢…見るんだよね」


「前世…?」


「周りにはいっぱい人が居て、ミントン毎日やってて、賑やかな毎日でさ」


「ミントン部だもんね、退は。退の前世の時代にミントンがあるなんて意外だけど」


「確かに。それで近藤先輩みたいな豪快な上司がいたり、土方先輩みたいな怖い上司がいたり、沖田君みたいにドSな人がいたみたいなんだよね」


「わぁ、退ってば前世でも大変そう」


「ご名答。その人達に、こき使われて目が覚める日もある」


「壮絶ね」


「今と変わらない気がしないでもないけど」





そう言うと退は体をゆっくり起こした。やっと閉じられていた目が開かれて目があう。でも、退は悲しそうな顔をしていた。




「でも、」


「………」


「俺」


「………」


「前世じゃ、人を殺してたみたい」


「………」


「何人も殺してたみたいなんだ」


「………」


「今日みたいな星が出てる空の下を"誰か"と歩いてるんだ」


「………」


「その途中、人が現れて俺と"誰か"を殺しにくる」


「………」


「俺は"誰か"を守るために戦って人を殺すんだけど、結局"誰か"は俺が守りきれずに死にかけるんだ」


「………」


「そしたら自然に口が動いて、死にかける"誰か"に、こう言うんだ」


「………、」


「"     "って」




退が言った言葉は首をもたげて泣いている震えた声のせいで聞き取れなかった。何故だか退が小さくみえた。退の握りこぶしをそっ、と握ると「人殺しの手だよ」と言われた。





「私もね、夢を見るの」


「………え?」


「今日みたいな星が出てる空の下を"誰か"と歩いてるの」


「………」


「その途中、人が現れて私と"誰か"を殺しにくるの」


「………」


「私は戦って"誰か"に守ってもらうけど、死にかけるの」


「………」


「でも、"誰か"が言うの」


「………、」


「"来世で会おう"って」













(やっと、見つけた)





(彼の肩越しから見た空は、"あの時"と同じ様に星が輝いていた)

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