銀魂
□偽り
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いつだって私は、側で彼の頑張りを見てきた。幼稚園の頃に必死で砂の城を作る姿も、小学生の頃に総悟とマラソン大会で一位を獲得すべく張り合ってた姿も、中学生の頃に携帯を手に入れるため一生懸命勉強していた姿も、全部全部零すことなく私は見てきた。これに関してはトシと幼なじみの近藤にだって負けないつもりだ。そのくらい長い間、私は彼を見続けてきた。ずっとずっと長い間。何故かなんて理由を問う必要もない。彼が好きだった。ただただ純粋に彼が好きだったからだ。神楽にそのことを話したら、「物好きアルな」と返された。確かにトシは変わり者だ。美味しいご飯にもかまわず大量のマヨをかけまくるし、無駄に負けず嫌いで小学生の時なんかは総悟とよく喧嘩して生傷ばかりを作っていた。でも、そんなトシも好きだった。傷を手当てするのも私だし、マヨを買ってくる役割も私だった。依存。私たちは互いに側にいることが当たり前になっていた。
「あ…」
「なんだ、まだいたのか」
私があたり前のようにトシの側にいて、彼もあたり前のように私の側にいる、そんな関係は高校生になった今でも変わることはなかった。もちろん、高校生になってからのクラスも必然かのように一緒で、クラス分けのボードを見た時は泣きそうになった。嬉しい、純粋にそう思った。その時の私はまだ綺麗だった。
「何やってたんだよ、こんな時間まで」
「銀八に捕まってた」
「…ほぉ」
「何」
「いや、別に」
「…うざ」
ただ最近の私は近すぎる存在もいけない、と思い始めていた事も事実だ。近すぎる距離は相手の嫌なところも見るってものなのだ。自慢じゃないが、これだけ側にいたらトシの些細な変化にも嫌にでも気がつく。嬉しい時は右上に目線を上げるし、悲しい時は眉による皺の量が増える。疲れている時は目をつむって額を押さえる。
「トシさ、」
「あ?」
「今、緊張してるっしょ」
「は、何言ってんだよ」
「口」
「は?」
「口元を手で隠してる時のトシは、緊張してる証拠なんだよ」
なんで分かんだ、と夕日の橙色に染まった靴箱にもたれ掛かりながら言うトシの言葉は、無視した。好きだったから、いつも見てきたから、なんて言えるわけがない。パタン、と履き慣れたローファーを投げ捨てて、出来るだけ早く履いた。後ろで何か言っているトシの声は聞こえない。
「誰から聞いたんだよ」
「…総悟から聞いた」
「あの野郎…」
「心配しなくても、他言しないから大丈夫だよ」
「そんなん分かってる。お前そんな奴じゃねーし」
「…そりゃよかった。じゃ、また明日」
耳を塞ぎたくなった。聞きたくなかった。一刻も早くこの場から立ち去りたくなった。トシの一言一言が私を骨の髄まで侵食しているようだった。歩幅はいつもよりも大きくて、足の回転数も早かった。不自然に思われたかもしれない。でも、これでよかった。あれ以上私があの場にいたら、次にあの靴箱に来るであろう、トシの"想い人"に何をしでかすか分からない。
そう、彼は今から告白するのだ。
今日、総悟から聞いた事実は思ったよりも私に影響をあたえることはなく、ただそう、と素っ気なくかえすことしかできなかった。でも、私がその前にトシに告白したりするなんてことはない。別に私がトシに好きだと伝える事が怖い、だとかそんな気持ちはこれっぽっちもない。けど言えない。言うことが"出来ない"。
「なァ」
「………」
「お前はよ、」
「………」
「心配いらないよ、私なら」
「………」
「ちゃんと銀八と上手くいってるからさ」
嘘のありふれた世界で1粒の涙
(好きの想いは涙に消える)
土方は、
ヒロイン→←銀八
土方→土方想い人
だと思ってる。
でも、本当は、
土方想い人→←土方←ヒロイン←銀八
みたいな話
銀八でてきてないけど
分かりにくくてごめんなさい…
続きを書くつもりです
20090311