企画
□赤く熟したその顔は
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あるところに、一人のお姫様がいました。美しく、しかし愛らしい一面を見せるお姫様。お城の皆にも慕われ、可愛がられていました。そしてある日、そのお姫様は凛々しい王子様と出会いました。勿論、二人は恋に落ち結婚を決意しました。
しかし、その事を憎んだ叔母が魔法を使い、お姫様を今の姿と天地逆さまの姿である醜い蛙にしてしまいました。
お姫様は醜い蛙の姿になってしまった為に、王子様もその蛙がまさか自分の愛したお姫様と気付くはずもなく、その蛙を沼に捨ててしまいました。
「…………なんでィ、そのロマンティックとも言い難い話は」
「この前、押し入れを整理してたらこんな本が出て来たんですよ」
「はぁ…杏もそんな本を持ってたんですねィ」
「…どういう意味ですか」
とある昼下がり。見回りも終わり屯所に帰って来て縁側でみかんを食べていたら、沖田隊長が「暇、暇」とうるさいので私が持っていた童話の本を読み聞かせていた。
「てか、暇潰しに読み聞かせをされたのは久々でさァ」
「だってこの話しか思い浮かばなかったんですもん」
「だからって18歳のイィ大人にそれはないでさァ」
「18歳は大人じゃないですよ」
「生意気言うんじゃねェ」
バシッ、と頭を叩かれる。(い、痛い)
土方さんに叩かれるのも痛いが沖田隊長に叩かれるのも中々だ。
「で、暇潰しくらいにはなりましたか?」
「……まぁまぁでさァ」
「まぁまぁですみません」
「…それにしても、その王子様っうのは最悪じゃないかィ」
「え?」
最後のみかんを自分の口にほうり込んだ沖田隊長がぼそっ、と呟いた。
「お姫様が蛙になっても気付かないなんて」
「確かにそうですよね」
「俺だったらなにがどうなっても見分けられるがねィ」
「………」
「…急に黙り込んでどうかしやしたかィ」
「………た、例えば…?」
「は?」
「例えば何を見分けられますかィ?」
そういう沖田隊長の発言は気になる。何を考えてそんな事を言ってくれたのか。
もし……その考えが少しでも………−−−
沖田さんは少し悩んで、ドSな笑みを浮かべた。
「そうだねィ」
「………」
「土方コノヤローはどんな姿でも一発で見つけられまさァ」
「は、」
「杏もだろィ?」
「そりゃ、勿論そうですけ、ど…」
違う。
違うの。
そうじゃなくて、
私は、そんな事が聞きたいんじゃなくて、
「…まかせろィ」
「…え」
「あんたは林檎でさァ」
「何言って「こうすりゃ分かる」
今まで横顔しか見れなかった沖田隊長の顔がこっちを向いていた。ぐっ、と近づいて来てその綺麗な整った顔が私に近づいてきて、ギュッと目をつぶった。
………………
………あれ?
いつまでたっても唇に衝動は来ない。
「…ほらな、」
「沖、田隊、ちょ……」
「直ぐに真っ赤になるんだからねィ」
「………」
「林檎みたいだ」
かぁっ、と顔に熱が集まる。唇が触れるか触れないかの距離で交わされる会話。
「…ッ…その顔誰かに見せたら、一番隊から外すからな」
「ッ……!?」
額に感じられたのは、自分の唇が求めていた柔らかな感触。
その感触を感じるのと同時に、バッと自分のジャケットを取ると歩いてどっかに行ってしまった。
…………あれ?
これって、
「総悟ォォォオ!!!!どこ行きやがったァァァァア!!!!」
「………」
「てめっ!!今までどこに……って杏?」
赤く熟したその顔は
(…お前何してんだ)(あわぁぁあ、ぇぇえ)(何言ってんだ)(ちょ、でこに、あふぁぁぁあ)(………総悟の野郎何しやがったんだ?)
send≫≫水無月秋穂様/Fairy Story/企画
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