復活
□ツンデレ
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「ただいま〜」
「おや、お帰りなさい」
「はぁ…ずぶ濡れ…」
外はザァァと雨が降りしきる音が響いている。強く降り続く雨音はこの古い骸達の家ともいえる建物を壊してしまうんじゃないかと思う程の強さだ。元々、風通しの悪いこの建物はこの季節になると更に締め切らなければならなくなるが故に、湿度がいつもの倍以上になり、それと共にムシムシとした暑さをつれてくる。しかし、梅雨は暑さと湿度以外に恐ろしいものを引き連れてくる。
「あ〜、マジ暑いんだけど。ウザ」
苛立ちだ。
「口がすぎますよ」
「うるせー、変態パイナップル」
「………」
「この暑さ、どうにかなんねーのかよ」
眉間には、いつもの倍以上によったシワ。
そして、いつもの倍以上に悪い口。そんな彼女は何をしでかすのか分からない。去年の梅雨は机を叩き割ったし、その前の年は壁に穴を空けたし、その更に前の年はバーズをボコボコにしていた。今彼女の最も近くにいる骸は、自分が被害にあうのではと長年の勘で自分の死期が確実に速まっている事を察し始めていた。
「………あの、」
「あぁ?」
今の一言でまた骸の死期が速まった。
これは、とりあえず話題を作らなければ、と骸の頭の中によぎった。
「あの…今までどこに行ってたんですか?」
「ツナの家に行ってた」
「あぁ、沢田綱吉の家にですか…って、ハァァァァア!!??」
「うっせぇな、頭のパイナップル抜くぞ」
「すいません」
ギロ、と殺気漂った目で見られれば、六道骸もただの犬に成り下がる。
「でも、何故…沢田綱吉の家に…」
「ツナん所のママンが、めちゃくちゃ料理上手くてさ。料理作ってもらってた」
「料理なんざ、千種に作ってもらえば良かったでしょうに」
「骸、妬いてんの?」
「違います」
「骸、かーわーいーいー」
「全く嬉しくありません。それより何を作っていただいたんですか?」
「骸、知りたい?」
「そりゃ、知りたいですよ」
「骸の誕生日プレゼント作ってもらってたの」
「自分で作らない所が貴女らしいですね(ってか、ちゃんと覚えてはいたんですか)」
「ん〜…作ってもよかったけど、作ったら作りたかった料理の原型留めないかもしれないから」
「………そうですね」
「って事で、骸誕生日おめでとー」
「………」
「………」
「……なんですか、これ」
「見りゃ、分かるでしょ」
「えぇ、あれですよね。頭文字に"す"のつくアレですよね」
「あたしは、コレを入れるのは邪道なんだけどね。なんで果物に火を通すのか意味分かんないけど、骸のためにね」
「いや、僕がいつ…それを好きだと言いましたか?」
「他にさ、ケーキとかもあるけどベタかなとか思って」
「あの、他にもあるんですよね。無視ですか」
「ああ…でもあたしの分のケーキだけでも買ってくればよかった」
「人の話聞いて…」
「そろそろ、認めた方がいいと思うびょん骸様。それは酢ぶ…」
「六道輪廻ぇぇぇえ!!!!」
「キャゥゥゥウン!!!???」
いきなり、現実を肯定し始めた骸が犬を吹っ飛ばした。ドスン、と嫌な音がして、そこには横たわる犬の姿。
「骸、嫌いなの?酢豚」
「あ、普通に言っちゃったよ、この人。僕が今までどのくらい頑張ってその言葉阻止してきたと思ってんですか」
「あ〜、骸は酢豚嫌いなのね」
「別に嫌いってわけじゃありませんよ?ただ、誕生日プレゼントに酢豚って聞いたことがなかったんです。普通はケーキとかなのに、酢豚ってアナタ。これは異例の事態ですよ」
「凄いね、世界初じゃん」
「そういう問題じゃないと思うんですがね」
「わざわざ、パイナップルが入ってる食べ物を選んで来たのに…」
「(他にもあるだろ)」
眉間に寄せられたシワが更によった気がしていた。いや、確実によっている。読心術ってやつだろうか。また死期が迫っている。
「まぁ…食べないこともないですけどね」
「骸、あーんして」
「……はい?」
「ほら、冷める」
「え?」
「口、開けて。入れてあげる」
「え、いやでも…」
「早くしないと、鼻に突っ込むよ」
ツンデレハニーの誘惑
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