復活
□まどろみ
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長かった腰まであった髪をばっさりと切った。周りからはイメチェン?だの、言われたけど別にそんなつもりはなくて、ただなんとなく、暑くて切った。あえて言うならば手入れも大変だし、面倒ごとが多かった髪ともおさらばしてしまいたかったからだろうか。そんな事を言うと京子やハルに言ったら、もったいない!と言われてしまった。
くせっ毛の軽くなった髪の毛先をベットの上でいじる。髪を切ると髪がはねやすくなると言うが確かにそうだ、と実感した。ぴょこ、といろんな方向にはねる髪にだんだんとイラつきを覚える。ボーン、と9時をさす鐘の音が聞こえる。もうこんな時間になってしまったのか。
「てめーはよ、自分で起きれねーのか」
「ぐっもーにん、隼人」
「今日は昼から任務入ってんだよ。さっさと起きろ」
「嫌。無理」
「ハァ?」
「女として出ていけない」
「ナメてんのか」
バタン、と乱暴な音がして我が部屋に無断で入って来たのは、ボンゴレ嵐の守護者こと獄寺隼人。無理矢理、布団を剥ぎ取ろうとする隼人にそうはさせまいと必死に布団にしがみつく。
「お前…っ、どっからそんな力出してんだ…!」
「ヤダヤダヤダヤダ、」
「なんなんだよ!」
「この布団の下、裸だから」
「………は!?」
ばっ、と急に隼人の手から布団が離されて、数歩下がる。顔を真っ赤にしたその顔はたまらないほど可愛い。嫌がらせ?あたしより遥かに可愛いんじゃないの、コレ。
「バッ…そういうのは早く…」
「バァカ、嘘ですー」
「……果てろ!!!」
「戦闘モードにならなくていいからさ、お風呂沸かしてくんない?」
「ハァ?」
「髪、はねちゃって変なの」
「バカヤロー!沸かしてる時間ねーんだよ!この前もそう言ってお前、風呂の中で寝てたじゃねーか!!!!」
「だって気持ちよかったんだもん」
「"だもん"じゃねー!!!」
未だ、布団から出る様子を見せさせずに眉間にシワを寄せたまま、ぐずっているあたしを見て呆れをきらしたのか、鏡に向かって隼人は歩き出した。鏡についている椅子を少しひいて、「座れ」と促した。
「え?」
「急げ、セットしてやっから」
「………」
「俺の方が短い髪には慣れてんだろ」
「…隼人、なんか今日優し過ぎてキモイ」
「悪態はいいから座れ」
素直に布団から出て椅子に座る。慣れた手つきでブラシを持ってゆっくりといていく。その手は優しくて赤ちゃんを撫でるようだった。寝癖直しを何度か降りかけて何回もとく。けど、それでも髪は、はねたままで目立つ。
「お前、くせっ毛過ぎ」
「うん、だから困ってんの」
「なんで切ったんだよ」
「別に意味はないけど…」
「ないけど?」
「今、切って得したと思った」
「どういう意味だよ」
「隼人は鈍感だから分かんない…よーだ…」
「失礼だろ、お前」
「………」
「ったく…ホラ、出来たぞ」
「………」
「オイ、出来た…って、寝んなよ…」
今日も優しい愛で溢れています。
20090225 加筆