復活


□落ちる
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びっしり、と並べられた本の数々。思わず立ちくらみがしそうになるのに堪えて一歩一歩歩いていけば、更に本の世界に飲み込まれていくようだった。リボーンに言われて向かったのは図書室。将来必要となるであろう、文を書く力つまり文章力やら読解力を身につけるため、まずは読書感想文の題材を探してこい、と言われて並中の図書室にやってきた。ズラッ、と並べられた本を見て思わず溜め息が出る。こんな中からどうやって探し出せというんだ。





「困った…」

「あの…」

「えっ!?」

「な、何か探し物ですか?」



振り向くと、小柄な女の子が立っていた。俺よりほんの少し小さな背で見るからに大人しめな感じだ。そりゃもう、平和主義者みたいな。雲雀さんとは大違い…って、咬み殺されそうだからこれ以上は心のなかでの呟きとは言え黙っておこう。この子の名札は一年生の物だった。ということは彼女が一つ年下、俺が一つ年上になるようだ。この時間に図書室にいるって事は図書委員かなんかなのだろうか。とにもかくにも、彼女の好意に甘えるしか今はなかった。



「えっと…読書感想文の題材を探してたんだけど…」

「わ、私も探します…!」

「え!?いや、別に…」

「大丈夫です!図書委員じゃなくても、本は好きですから!」

「図書委員じゃないの?」

「はい!風紀委員ですけど、任せてください!」



珍しい、風紀委員に女の子なんていただろうか…?いや、それよりも彼女はどうやら、見かけによらず負けず嫌いな性格らしい。別に馬鹿にしたわけではない。しかし、急にやる気になった様子を見ると、断ろうにも断りきれなくなってしまった。「探してきます!」と勢いよく走り出したその女の子深黒の髪を風に遊ばせながら、活字だらけの本棚の世界に紛れ込んでいった…かに思えた。



「きゃあ!!!」

「えぇ!?」



気合いが入りすぎたのか、それとも目の前が見えていなかったのか、はたまたこれが素なのか、彼女は盛大に棚に向かって突進していった。ドスン、と音がして「いたたた…」と頭をなでる姿は何故だか親近感が持ててしまって少し悲しくなる。慌てて彼女に駆け寄るとスカートが少しだけめくれていて、なんだか恥ずかしくなった。



「だ、大丈夫!?」

「すいません…大丈夫で、す…いつものことですから…はは、」

「…うん、分かるその気持ち」

「え?」

「あ、いやなんでもない!」





思わず出た本音を慌ててふさぎ込み手を差し延べる。スミマセン、と言い座り込んだ彼女が俺の手に腕を延ばすと、「あ…!」と小さく声を漏らした。ふと、疑問をもって、その彼女が見ている先を見ると、









「うわっ!!!」
「きゃあ!!!」






本が降って来た。





思わず避けることは出来ずに、反射的にこの小さな風紀委員を守らなくては、と脳が理解し、すかさず被い被った。バタバタと背中に感じる痛み。しかし、自体は思わぬ展開に。



「あ……、」

「え…?」



いや、別にやましい気持ちはない。ただ、予想以上に降って来た重たい本のせいで被い被るどころか、重さの衝撃で押し倒してしまった。




「あわわわ…!ゴメン!すぐどくから!」

「い、いえ…こちらこそ、スミマセン…!」




慌ててその場から離れると、彼女もその場に座り直した。そして、気付いたように周りの本を慌ててなおしだす。俺もその光景を見て、「手伝うよ!」と言いそれに参加した。散らばった本を片付けていく俺達は沈みかけていた夕日に照らされてオレンジに染まっていた。ただ、なんだかこっ恥ずかしくて、顔がほてり始めるのにはそう時間はかからなかった。





「あっ!ゴメン!」

「わ、私こそ…!」





そして本を拾う時に偶然、触れた指先から更に体温が上がるのを感じた。









20090113 加筆
2008xxxx 更新

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