復活


□簡単
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きつかった数学も、やっと終了して休み時間に入った。机の上に散らかっている教材を机の中に放り込み、腕を枕代わりにして俯せになる。はぁ、と深いため息をついた。特に何が嫌だとか、そんな訳ではない。別に今日の数学で先生にあてられた訳でもないし、体育がある訳でもない。ただ、なんとなく出てしまうのだ。例えるなら胸をぎゅう、とおもいっきり打たれたと言うか…そうだ、モスカが胸の上に乗っている感じだ。うん、我ながら良い例えだ。





「十代目?どうかなされましたか?」


「よぉ、ツナ。元気ないのな」


「…てめぇは、すっこんでろ!野球バカ!!」


「ご、獄寺君…静かに…!」




いつの間にか俺の机の前にいた、獄寺君と山本はいつもどおりの様だった。獄寺君が山本に一喝して犬の様に睨む。そして山本はそれを完璧にスルーして話を元に戻した。



「で、どうかしたのか?」


「え?」


「ツナ、元気ねーからさ」


「まさかどこか、お体を…!」


「いや…別にそんなんじゃないけど…」





あながち獄寺君が言ってる事も間違ってはいない。胸が痛いのは確かだ。けど、何かの病気って訳でもなさそうである。特に理由もないが…なんとなく勘で。獄寺君は心配して、薬がなんだとか、イタリアの方にある有名な病院はなんだとか話しているけれど、上手く聞き取れない。いや、聞いてはいるのだが、耳に入った言葉が脳に蓄積されることなく、通り抜けている様だった。まさに、右から左へという感じだ。




「と、言う事でイタリアへ行きましょう!十代目!」


「は!?」


「俺が小さい時に通ってた病院の…」


「だから、大丈夫だってば!」


「しかし…」


「獄寺、ツナがいいって言ってんだからいーじゃねぇか」


「うるせぇ!黙ってろ野球バカ!」


「バカなのは、お前だろーが!!!」






いきなり現れた少女に獄寺君は息絶えた。そりゃあ、教卓の角で頭を殴られれば誰しも痛いだろう。そうとうな痛みのはずだ。いや、まぁ失神したという事実に比べたらそんな物はちゃっちい物で(ファンクラブが叫んでる辺りを見ると、そうじゃないとも言いたくはなるが)、不良という代名詞を背負っている獄寺君に、こんな喧嘩を売るような真似が出来るのは、この学校で唯一彼女しかいない。





「痛ってぇだろ!このタコ女!」


「痛い様に打ったんだから当たり前よ、バカ!ろくに日直の仕事もしないで!!」


「まぁまぁ、二人とも落ち着けって」


「武は黙ってて!」


「そうだ、野球バカ!」





獄寺君の幼なじみと言う称号を会得している彼女は、イタリアと日本のハーフだと聞いた事がある。その短い金髪の髪はイタリアのお母さんから引き継いだものだとか(因みに外見、全てはお母さん似だという)。しかし、性格はおしとやかなお母さんのは受け継がず、マフィアのお父さん似になってしまったらしい。マフィアに元々いた、という環境の中で育ったというのもあり、性格は…




「あたしに喧嘩売ろうなんざ、百年早いっつーの!!」


「んだと!?俺がてめーみてぇな奴に負けっかよ!」


「随分とまぁ、自意識過剰じゃない、獄寺?」


「なんなら、俺の力試してみやが……れッ!!!」


「ハッ、どこ向かって投げてんの?物を投げるときは…こうすんの…よッ!!」





この様な性格に出来上がってしまったらしい。(それプラス、獄寺君と幼なじみで昔から一緒にいるのも影響していると俺は思っている)




「じゅ、十代目!前!」


「へ!?」





獄寺に声をかけられて気付いた時には遅かった。ボフッ、と顔面に直撃したのは黒板消しだったようで、顔が粉っぽくなったみたいだ。「十代目に何しやがる!!!」と吠えるように彼女に獄寺君が飛び掛かって行くのを見ると、彼女が獄寺君に向かって投げた黒板消しを獄寺君が避けて…それが、運悪く俺に当たったに違いない。いや、絶対そうだ。




「てめぇ、待ちやがれ!!」


「ゴメン!ツナ!」




風の様に、ここが三階なのも知らずに飛び立った彼女に続いて、獄寺君も飛び立った。(その後に、物凄い獄寺君の悲鳴が聞こえた気がしたけど気のせいだと信じよう)



「ツナ、大丈夫か?」


「山本…ったたぁ…大丈夫だよ…」


「なら、獄寺達止めにいかねぇとな!」


「え?」


「雲雀がこの時間帯、見回りしてっからさ!」


「うわ!急がないと!」


「雲雀、あいつの事気に入ってるからな!尚更、急がねーと!」


「え!?」


「だって、ツナ あいつの事好きなんじゃねーの?」










(そっか…)
(ツナ、気付いてなかったのな)
(黒板消し)
(え?)
(黒板消しの件は許してあげれるけど、獄寺君と二人きりは許せないかも)




(気付かぬうちに、心も体も君に支配されていた。今獄寺君と二人きりだと考えたら、校庭へと向かう足取りが速くなった気がした)



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