獄寺拍手連載
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Act≫≫V
「よ、スモーキンボム」
「てめぇは…跳ね馬」
何事もなく終わった学校からの帰り道。家に帰るために下校していると、金髪の男とダンディな男が俺の家の前に立っていた。その正体はキャバッローネファミリーのボス、跳ね馬ディーノとその部下ロマーリオだった。
「久しぶりだな」
「何の用だ。アンタから俺の所に来るなんざ珍しいじゃねーか」
「まぁ…ちょっと、な」
「…家、上がるか?」
「いや、恭弥にも会いに行こうと思ってんだ。だから、ここで…すぐに終わるからよ」
おかしい、と思った。
跳ね馬のいつもの馬鹿みたいな馴れ馴れしさはなく、なんだかソワソワしている様だった。「その…」と頭をかきながら、困ったように躊躇う。
「えっとな…」
「頼み事か?」
「まぁ、そんな感じではあるんだが…」
「ボス、早く済ませねぇと恭弥がまた見つからなくなるぜ」
「分かってるって!!そのな…最近、黒髪の女の子を見なかったか?」
「黒髪なんていくらでも学校にはいるっつーの」
「あ…なら、」
「あのな、外国人みてーな顔して、背が高くて…恭弥のお気に入りで、肝が座ってて…度胸のある女だ」
「ロマーリオ!」
「だってよ、ボス…」
「バッ…まぁ、イイ。なァそんな奴見なかったか?」
「は?そんな女いるわけ−−………」
「あら、大丈夫?」
「ふふ、獄寺君も度胸あると思うけどなァ…」
「その女、どこに行ったの?」
「ふぅん…じゃあ、また鬼ごっこの始まりって訳だね」
「あ、」
ふと、頭に浮かび上がってきたのはこの前会った少女だった。ロマーリオが言ったような性格した女なんてアイツしかいない。
「獄寺!知ってるのか!」
「あ、ぁ…この前学校で会ったぜ」
「ロマーリオ!すぐに学校に向かうぞ!車、回せ!」
「イエス!ボス!」
「おい!なんなんだよ!」
急に安堵の笑みを浮かべた跳ね馬を見て、一人取り残されたような気分になった俺は慌てて跳ね馬に話を聞こうとした。
「…その女の子、何か言ってたか?」
「は?別に…」
「お前に会ったとき、何か言ってなかったか?」
「俺に…?」
「……ッ何か言ったはずだ!!何か…」
「ボス!落ち着け!」
「………ッ…悪ィ…」
とことん、今日の跳ね馬はおかしいらしい。いきなり怒鳴ったり、慌てたり、混乱したり…いや、慌てるのはいつもの事だが。そんな事を感じながらふと疑問が沸き上がった。
「お前…あの女の、」
「獄寺」
「…なんだよ、」
「アイツはいつも一人だった」
「………?」
「いや、俺が一人にさせちまった」
「何言って…」
「だから、せめて…日本でくらいは皆で騒いでやってくれねーか?」
「オイ…、」
「一人の男として…一人のアイツのボスとしての…頼みだ」
「ボスって…じゃあ、アイツ…!」
やはり、俺の勘は当たっていたらしい。これでつじつまが合う。あいつが学校を休んでいたのは、病気なんかじゃなかった。イタリアの噂は跳ね馬…キャバッローネファミリーの所に帰っていたから。これで話は繋がった。
「待てよ!じゃあ、なんでアイツは此処にいんだよ!」
「………」
「お前のファミリーなら、お前が面倒見るんじゃねーのかよ!ましてや、部下がいねーとダメなお前が…」
「獄寺、それ以上は悪いがまだ何も言えない」
「…っ…どういう…」
「まだ、言えない…いや、言うべきじゃない…」
「何を…」
「まだお前らは"先日あった同じ並森生"でしかない」
「………」
「そんなお前に話をした所で何になる?」
「……確かにそうじゃあるけどよ…」
「いずれ、必ず聞きたいと願う日が来るはすだ。それまで…」
『あいつを頼む』
さっきまで、晴れていた空が曇り出した。窓にポツリ、と一つ雨粒が当たれば、一気に五月蝿いほどの雨が降って来た。
跳ね馬が言っていた事も分からなくはない。実際、俺がアイツを気にする事はないんだ。まだ一回しか会ったことしかないわけだし。
「何、やってんだ俺は…」
胸に残る渦巻く感情
(曇る天候はまさに今の感情を映し出しているようで)
20090301 修正