銀魂長編
□脱出
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暗くて冷たくて長細い円柱型の水槽の中。体には無数のコードが繋がれているた。ポコ…と透明の泡が溢れては消えるその泡を見つめる。もう何時間も見た光景にそろそろ飽きてきた。そのバックには真っ白な白衣を着た男達がいる。醜い。醜い。その手には何やら難しい文字が書かれているボードを握っている。
-零-
脱出
こいつらは『主人(マスター)の部下』。私の主人にそう教えられた。『主人』はまだここにはおられない。今日は満月だ。おそらく、酌でも誰かと交わしておられるのだろう。
「今日はどうだ」
「それが、今日は意識があるみたいでな…」
「…珍しいな。薬は投与したのか」
「あぁ。だが効かなくてな…」
「…大丈夫なのか?」
薬…?嗚呼、あの痛い薬…。いつものコードから流れてくる得体の知れない薬の事らしい。いつもは体の自由が効かなくなるのだが、免疫力が高まってきたのか、珍しく効かないみたいだ。憶測での話ではあるが。
「おい…!こっちを見てるぞ!」
「そんな…こんなに薬を投与したのに…!」
「…早く眼帯を…っ…なっ…地震!?」
地が揺れてる…。今日は気分がいい…。力が…溢れてる…。
右目が熱い…。
ピキッ−−−………
「な…ガラスが…!?」
「…そんな…っ…」
ピキッ−−−………
『もう嫌だ…』
バリッ−−−………!!
体に繋げられていたコードを無理矢理引きちぎる。嗚呼、体が軽い。髪からはポタポタと力が制御されていた液体が流れ落ちる。周りにいた輩が尻餅をついていた。実に滑稽。
「…ひぃっ…や、止めろ!!!」
『貴様らの指図はもう、うけない…』
「お前…!!主人に逆らうのか!!」
『私は自由すらないこの闇から抜け出す…』
「何を…ッ…グハッ!!???」
無意識のうちに右手には黒く大きな扇が握られていた。赤い警戒音が鳴り響き、ガラ、と頭上からコンクリートが降ってくる。男どもの気持ちの悪い悲鳴がこだまする。真っ赤な手には無意識に握っていた私用の眼帯があった。
「よぉ、派手に暴れやがったな」
『主人(マスター)…』
『こんな事、していいと思ってんのか」
『…さっきも主人の部下にいいました。私はもう主人には従わない』
「………」
その男はジッ、と右目だけでこちらを見る。
「眼帯はつけろよ」
『……っ…』
「どうした。逃げるなら逃げろ」
『主人…、
さよなら』
今、
黒い蝶が、
飛び立った。
To be countenued...