氷イチゴ

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一緒にいることが当たり前で、何をしても何故か同じになる。だから違うと言えば性別くらいじゃないかな、と私は思うんだ。


岳人と付き合うのは必然だったんだねとよく彼と話をする。彼もまた“お前は絶対俺じゃなきゃ駄目だもんな!“と自信たっぷりに私の頭を撫でる。悔しいけどその通りで、わかってくれている岳人を愛しく思った。




そんな彼の誕生日、私はこっそり慣れないながらもケーキを作ってきたのだ。…まぁ味はさておき、見た目がー…。いやいや、きっと岳人のことだから美味しいって食べてくれるはず!そう思い、いつのものように自分のお弁当とケーキを隠し持ち岳人達のいる屋上へ向かった。






「やっときやがった!」


『ごめんね、お昼休みで廊下混んでて!』


「ま、仕方ねぇか。弁当食おうぜ!!」


『うん。…あれ?忍足君たちまだきてないんだ。』


「購買にパン買いに行った。母ちゃんが朝作ってくんなかったんだって。」


『可哀想。』


「心込もってねぇし(笑)」




テニス部の彼らは屋上でお昼をするのが日課。レギュラーばっかりで私みたいのが混じっちゃいけないとは思うだけど、岳人に引っ張ってこられた日から私の日課にもなってしまった。


(ケーキ渡すなら今かな…?)





さすがに彼らがいると彼女とはいえ恥ずかしいのだ。ましてやお世辞にも美味しそうとはいえないケーキを晒せるわけもなく。

私は意を決して背に隠していたケーキに手をかけた。





でも岳人の隣にある大きな箱を見て手が止まる。






『岳人…、その箱は?』


「ん?あぁ忘れてた、これクラスの女子からもらったんだけどよぉ。ケーキ?とかいってた。」


『そ、そっか…。』





岳人はテニス部で、人気のあるレギュラーで、皆から慕われてて、だから何か貰うなんてしょっちゅうだから気にはしない。


…いままでは。



“ケーキ“という言葉で私の手は止まってしまった。






その時、屋上のドアが開いた。購買に行っていた彼らが帰ってきてぞろぞろ入ってくる。




「おい岳人、焼きそばパン売り切れだとよ。」


「うわまじかよ!!って、宍戸ちゃっかり持ってんじゃねぇか!」


「バカか。これは俺の昼飯だ。」


「クソクソ!!宍戸の奴!!」


「岳人が頼んだんだやろ、それが嫌やったら自分で買いに行きぃな。」


「ちっ!侑士まで宍戸の見方かよ。」




彼らは私達の回りに座り始めた。すると二年生の鳳くんが岳人の隣にある大きな箱を見つける。




「向日さん、それってケーキですか?」


「おぅ、クラスの女子から貰った。開けてみようか?」




なんとなく…、なんとなく見たくないなと思っていたのに、依とも簡単に開けてしまう岳人に胸がズキンと痛んだ。






「「「おぉ〜!」」」


『(これ、本当に手作り…?)』




中には綺麗なデコレーションがされたBirthdayケーキが入っていた。




(私とは…ぜんぜん違う、)





そう思うとケーキを渡すという思いがだんだんと小さくなっていく気がした。





「お前も渡さねぇのか、これ。」



『えっ?…あ、跡部君!?…』




気づくと跡部君が背に隠していた私のケーキの箱をひょいっと持ち上げた。






『だ、駄目!!それ返しー…!!!!』





跡部君からひったくった瞬間にやってしまった。箱はスローを見ているかのように床へ落ちてしまう。





「……それ、もしかして?」


「岳人に…」




『ごめん…私、ちょっと用事思い出したから…、今日はもう行くね…!』


「ちょっ!待てよ!……」







岳人の話を聞かぬまま、ぐちゃぐちゃになってしまっただろうケーキと自分のお弁当を持って屋上を飛び出した。



(岳人の誕生日に、何やってんだろう私……―)





悔しかった。彼女なのに岳人にとって一番特別な日なのに、満足に祝ってあげれない事が。




階段を降りきって立ち止まると箱の中を見た。






『みっともなかったケーキ、…もっとぐちゃぐちゃなっちゃった……。こんなの、岳人に
見せられないよ…っ』





近くにあるゴミ箱に投げすててしまおうと考えた。その時、






「捨てるなっ…!!!!!!」


『……!!…岳人…?』






階段を走って降りてくる岳人が私に叫んだのだ。






「俺にくれるのになんで捨てるんだよ…、」


『だ、だって、もうぐちゃぐちゃだし、…それにクラスの女の子から貰ったケーキあるから私のいらないと思って …―』






すると岳人は私の手からケーキの箱をとった。




『見ちゃだめ…!!』


「すげぇうまそうじゃん。」


『えっ…』


「お前が一生懸命作ってくれたケーキ、すげぇうまそう。」






もちろん形なんか残ってない。ぐちゃぐちゃでクリームだらけでイチゴなんでクリームのせいで真っ白だ。





『でも岳人にとって一番特別な日なのに…』


「お前は誰の彼女?」


『えっ?…』


「誰の彼女かって聞いてんの。」


『が、岳人の…彼女。』







すると岳人はいつものように大きな手で私の頭に手をのせた。




「だったらお前が祝ってくれねぇと意味ねぇだろ。」


『……岳人っ…』


「俺はお前のケーキしかいらない。あのケーキは侑士達にやる、それでいいんだ。よし、このケーキ貰うからな!」





そういうと照れ隠しなのか耳を真っ赤にして屋上へと向かい出す岳人、その背中に私は抱きついた。





「ばっ…!!!!危な……っ」


『誕生日、おめでとう岳人っ!』





















生まれてきてくれて本当にありがとう。


大好きな大好きな私の王子様。











愛をお召しあそばせ?
(いっとくけどよ、)
(なに?)
(俺にとって一番特別な日は
お前と出逢った日だからな!)
(なんか今日の岳人かっこいい…)
(いつもだろ!)








あとがき


反省したいことが山ほどある奏瀬詞音でございます。これが出来上がったのは誕生日当日!企画をしてくださったひゃわしゃんには大変ご迷惑をお掛け致しました…!!!!!!!!申し訳なさすぎて土下座しにいきたいです!!!!!!!!!!というか現在進行形でやっております!本当に申し訳ない!!



久々に書いた小説ですが、楽しんでいただけたなら幸いです^^





『君の手と空と』
管理人・奏瀬 詞音

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