短・中編

□浦島太郎はどこへ消えたのか
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「僕が大きくて立派になったら、必ず君をお嫁さんにしてあげるよ!」

「わぁ、嬉しい!ねぇ、絶対だよ?約束だよ?」

「うん、約束だよ!」



 君とあの約束を交わした幼きあの日々は、あんなに光り輝いていた。今でも、あの時の約束はきっと叶うって私は信じ続けている。

 彼はまだ、帰ってこない。








「ようこそいらっしゃいました。この度は、私の家来である亀を助けてくださってありがとうございました。さあさあ、どうかおくつろぎになってくださいませ。温かい、自慢の料理が出来上がっておりますわ。おかわりはいくらでもありますから、遠慮なく召し上がってくださいませ。ここは、お客様へのお持て成しが自慢でございます。ここの宮廷料理は世界一美味と言っても遜色がありませんわ。それに、ここでもてなしているのは世界屈指の美女達ばかり。お食事が終わりましたら、大浴場へご案内いたします。大浴場は、世界一の広さと美しさを誇っております。何より、聖なる祈りを捧げた湯に一度浸かりますと、体中の疲れがみるみるうちに取れていきますわ。当亭ご自慢の持て成しを、心行くまでご堪能してくださいませ。


 あら?満足したからお帰りになる?そのような事を仰らずに、まだまだ遠慮なくお休みになっていってくださいませ。ここではお客様に最高のお持て成しをいたす為に、世界各地からあらゆる物を取り集めております。貴方がお望みでしたら、酒の肴に世界各地から貴方のお好きな歌手でもお招きしましょう。ここでご用意できないものはございませんわ。そして、当亭自慢の、選りすぐりの美女達によるサービスも充実しておりますわ。お気に召した娘がいましたら、食事から入浴、ベッドまでと、ずっとご一緒させていただく事もできます。


 ここには、貴方にとって不自由な事は何もありません。悲しい事もありません。貴方の望むものは何でもご用意させていただきます。ここは世界一の楽園。いつまでここにいても構わないのですよ。さあ、おくつろぎになってください」








 幼き日の約束は、海に溶け、そして消えてゆく。

 彼はまだ、帰ってこない。









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