短・中編

□waste time
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「元レインボーベル王国軍総隊長殿とそのお連れの方々、お初にお目にかかります、私は──」

「おい、俺もレインボーベル王国軍“風”の隊長なんだが」


 不意に赤毛の青年が口を開き、場の空気が凍る。

 その微妙な沈黙を破ったのは、彼の父親だった。


「オルハ! 折角だからその肩書きに『愛する父親の意思を継いだ』と付け加え──」

「黙れクソ親父ぃぃぃ!」


 青年、オルハの綺麗なアッパーカットが炸裂し、ぶっ飛ばされた父親は天井に上半身がめり込んだ。

 その様を呆気にとられて見ていたレオナルドだが、ハッと我に反ると息子を振り返った。


「クレス! 僕は別に君が夕騎士団の一員じゃなくても、僕の意思を継いでいないとかそんなこと思わないから安心してくれ!」

「や、元々心配してね〜し」

「僕はそう、クレスがこの世に存在するだけで幸せなんだ! あ、でもついでにハグしてくれるともっと嬉し──」

「黙れ親バカ変態ぃぃぃ!」


 陽南の右ストレートが顔面に命中し、やはりぶっ飛ばされたレオナルドは窓を突き破って落下していった。ちなみにここは三階だ。


「……やるな、あんた」

「アンタもね」


 陽南とオルハは顔を見合わせ、苦笑する。

 その背後では、茶髪の少年が三明に声を掛けていた。


「なぁ、お菓子のおかわりって無いのか?」

「さ〜な。俺のオヤツならあるけど……食う?」


 三明が取り出したせんべいの袋を見て、少年は目を輝かせる。


「くれるのか!? あんたいい奴だな!」

「別にい〜けど……っつ〜かアンタらは、ラベンダーなんとかの人じゃね〜のか?」

「レインボーベル王国軍よ。“ー”しか合ってないじゃない!」


 黒髪の少女にツッコまれ、三明は肩を竦める。


「それそれ。ま、俺も騎士団員じゃね〜けどさ」






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