短・中編

□続・Error Quest
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「腹減ったな……」


3人は、鬼を倒すべく北へ北へと足を運んでいた。
そんな中、不意にシャルがそう呟いた。


「もう少しだけ辛抱してくれない?ここから抜け出したら、また好きなだけ食べられるわよ」

「ああ、そうだな……ごめん」


そう言ってシャルが再び足を進めようとしたその時だった。


グ〜ッ


大きな音が響いた。


「…………」

「シャルの腹の虫だな」


冷静に言う三明の言葉に、シャルはきょとんとしたように三明を見る。


「腹の虫?俺の腹の中には虫がいるのか?どんな虫なのかな」

「あ〜、虫には詳しくないからわかんね〜や」

「クレスの腹にはどんな虫がいるんだ?」

「いや、虫いね〜し」


シャルの発言に対し、三明は冷静に言葉を返した。
そんな2人のやり取りを、陽南が横から苦笑いをしながら眺める。


グ〜ッ


そんなやり取りをしている最中にも、シャルのお腹は鳴り続けるのだった。


グオ〜ッ


「……さっきからどんどん大きくなってるわね」

「そうだな……おい腹の虫、頼むから大人しくしててくれよ」


グオ!!

シャルが懇願すると、更に激しい音が鳴った。


「……凄い音がしたな」

「こらっ、腹の虫!」


グォワッ!!


「何今の音!?」


あまりに元気の良すぎる腹の虫に、陽南は思わず突っ込んだ。というか本当に腹の虫なのだろうか。


「……腹、減ったなぁ……」


そう言うシャルの顔つきはあまりにもしょんぼりしていて、もはや見てはいられなかった。


「………なあ、シャル……」


三明がシャルに何か言おうと、話し掛けたその時だった。

お馴染みの曲が聞こえてくるとともに、視界が暗転した。


「……またか」

「シャル君がこんな状態の時に!」


陽南と三明が、それぞれの武器を構える。陽南の武器は牙だったが、近くに落ちていたちょうどいい重さ・大きさの木の棒を構えた。


【野生のベアが現れた!】


熊のような姿をした獣だった。

腕が異様に長く爪が長く鋭いその獣は、以前シャルがヒマワリ畑で寝ていた時にシャルに襲いかかっていた獣と同じそれだが、シャルには知る由もなかった。


【ベア:Lv13
 戦う
 道具
 逃げる】


「……今までの奴らよりもレベルが高いな」

「ここは協力して戦うのがいいわね、シャル君」

「……………」

「……シャル君?」


返事がないシャルに、陽南はもう一度声を掛けようと振り返る。しかし、先程までとは明らかに様子が違うシャルに、陽南は戸惑った。

シャルはベアを凝視している。これでもかと言わんばかりに、ベアをジーッと見ていた。


「……ど〜した?シャル……」

「……なあ、ヒナにクレス」


シャルはベアを指さして、2人を振り返った。



「あいつ、食えるかな?」



シャルの空気が、只ならぬ物に変わった。その只ならぬ空気を感じ取ったベアは青ざめ、すかさずシャルに背を向けて逃げ出そうとした。

しかし、シャルはそれを追った。


「待てぇぇぇぇぇ!!!!」

「っ!!!?」


もはや獣に引けを取らない速さで、しかも鬼のような形相のシャルに追われ、獣はもはや恐怖に包まれていた。

獣にそんな知性があるのかは、定かではないが。


「な、なんだあれは………」

「しゃ、シャルくんが豹変したわね……」


陽南達がそんなシャルを見て思わず引いたのは言うまでもない。










【ベアを倒した!
 戦利品として熊肉を手に入れた!】




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