短・中編
□狼vs3匹の子豚
2ページ/6ページ
〜ロキサイド
「あいつら……見てろよ!」
何処から買ってきたのかわからないが、ロキは忙しく動きながら煉瓦を積む。
「えーと、ここをこうやって〜」
ズボンポケットから説明書を取り出し、再び動くその姿は職人の目で無くても歪に歪んでいるだろう。
野原を見回せば、何日も掛からずに作られた藁の家(1ルーム)と、一日足らずで作られた木の家(1Dルーム)。
手抜きにも程があるだろう。
「はっ、俺の家に住みたいって言っても聞かないからな!」
その声が聞こえてたのか分からないが、藁の家の主、キッペーは危機に見舞われていた……
〜☆〜☆〜
「ここに国一番の問題豚がいるんでしょ?」
「はい、そうです」
野原に咲く向日葵よりも輝かしい金の髪を持つ少年と、闇を思わせる少年から青年へと変わり始めた青年の姿……
「狼族の名に懸けて、問題豚を矯正したいと思いまーす!」
「…………養豚?」
「ちーがーうーよ!教育、教育的指導!」
尖った耳をピコピコ揺らし、太く厚い尻尾からその存在が伺えるが、可愛らしい容姿から「言うこと聞かないとアレだよ?」っと自分より身長が上の青年を脅す姿から「羊の皮を被った狼」っと思ってしまうだろう。
「一馬、最初はあの藁の家からだよ!」
「はぃはぃ、ユキトさんは手を出さないで下さいね、」
一馬と呼ばれた青年は、可愛らしい容姿の少年、ユキトに釘を刺すと、ポケットから無線機を取り出した。
「もしもし、No.1からどうぞ、」
『はーい!』
機械音と共に響く気味が悪い声。
野原から猛スピードで駆けてくるその姿は大自然の高原にはけしてお目にしたくないような派手な赤。
「……アレは?」
「ただの余興です」
─さぁ、ショータイムの始まりだよ?
〜☆〜☆〜
「ぷしゃしゃしゃしゃ〜、子豚ちゃーん!ボクと一緒に遊びましょー!」
騒音と呼ぶに相応しい程の声、扉は勿論無いから騒音の張本人が丸見えだ。
「なんやねんオマエ!」
「皆の友達、ピエロのマイルさ!」
「帰れ!」
キッペーの怒鳴りも何のその、
赤っ鼻と赤と白のボーダー服と同色の帽子から見える尖った耳と固い尻尾。
「ね〜ぇ?」
「……セールスはお断りやで、」
キッペーは藁で空いてる部分を閉じた。
「そっちがその気なら〜ボクは容赦しないよ〜?」
傷付いてる素振りを見せないピエロのマイル。少し距離を置き、何やら軽く準備体操をして…………
「ボクの息でこんな藁屋吹き飛ばしてやる〜」
──器物破損だ。
「大丈夫、台風が来た時はボクの息よりもスゴイデショ!」
すぅぅ〜〜っ、と息を吸い込み始めるピエロのマイル。外の状況がわからない筈もないキッペーだが、何故か藁屋から逃げない。
「食らえ、マイルの吐息!」
ぶはぁぁぁっ!と吐き出された息。狼だからかピエロだからかその吐息は激しい、激しい。
「ぷひゃひゃひゃひゃ〜〜、ば〜らばら〜、ば〜らばら〜」
──果たして、子豚の運命は!?