短・中編
□オンリーロンリー
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物心つく頃から剣を握り、振るってきた。
ただがむしゃらに、強さを求め続けた子供時代。
七つの時には親を負かし、その数年後、弱き保護者は呆気なく逝った。
「お前は、見所がある。強さを求めるならば、来るといい」
親を瞬殺した男に自分も挑んだが、完全なる敗北を喫してしまう。
「……行く」
しかしその時感じたのは恐怖ではなく、強者と出会えた喜びだったのだ。
オンリーロンリー
胡座をかいた姿勢で眠っていた竜真は、微動だにせず目だけ開けた。
横になると咄嗟の反応が出来ないため、寝る時はいつもこの姿勢なのである。
「……朝か」
凝り固まった身体を解すため、傍らの大剣を背負うと、早速外へ出かけた。
相棒である紫紺色の飛竜は、朝に弱くまだ眠っている。
そのため竜真は、毎朝歩いて“目的地”に向かっていた。
「よし」
山道を二十分歩いて辿り着いたのは、雄大な滝壺。
そこでコートと衣服を脱ぎ捨てた竜真は、逞しい上半身を晒した状態で、大剣を引っ提げ、ザバリと滝壺に入った。
「むんっ、ぬんっ!」
絶え間無い激流を一身に浴びながら、素振りをする。
重力に従って落ちてくる大量の水は、風属性の大剣が振るわれる軌道に触れると、たちまちその部分だけ真っ二つに“斬れた”。
「さて……そろそろ戻るか」
そのまま小一時間ほど朝の日課に没頭していた竜真は、手拭いで簡単に身体を拭き、衣服を羽織る。
下半身は相変わらず水浸しだが、替えを持参しているため特に問題はない。また屋外とはいえ人気のない場所であるため、着替えに困ることもなかった。
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