短・中編

□オンリーロンリー
2ページ/7ページ



 来た道を歩いて帰ると、ようやく目覚めたらしい相棒が、喉を鳴らしながら出迎えた。


「お早う、ブラックサンダース」


 “Mr.サンダートルネード”という素敵な呼称にあやかって付けた名を呼べば、紫紺の飛竜は竜真の肩に顔をすり寄せてくる。

 二、三度背を撫でてやってから、竜真は鞍に乗った。


「では、朝食を摂りに行こう


 その声を合図に、ブラックサンダースは勢いよく飛翔した。

 目指すは、アジトから数分の人里に位置する、お気に入りの食堂だ。










「はい、おこめ食堂の朝セット。お待ちどうさん」

「有り難い。頂こう」


 ここの朝食セットは、白米と漬物、焼き魚、そして味噌汁という完全なる和食だ。

 鍛練後ということもあり、空腹感に任せて一気に掻っ込む。


「いつも早朝にすまない。馳走になった」

「はいよ。あんたの食べっぷりには、いつもこっちが気持ちよくなるさね」


 常連客である竜真は、食堂の女将とは既に顔見知りと化している。

 指名手配犯の自分に何も言わないでいてくれる(もしくは気付いていない)彼女には、内心ひどく感謝していた。




 おこめ食堂を出ると、木陰で待たせていたブラックサンダースと共に、再び空を移動する。
 間もなく辿り着いたのは、森の中にある小川だった。


「川か。今日は魚が良いのだな」


 昨日は鳥だったが、今日は魚の気分らしい。飛竜は竜真を降ろすなり、水に飛び込む。

 相棒の食事中は特にすることもないため、竜真は背中の大剣を抜き、丁寧に手入れを始めた。






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ