テイルズ短編

□待ってたから
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「…なんで…皆は…?」

あぁ、酷い声。

違うだろ。

次にロイドに会った時にはもっと大人になった俺様のカッコよさを見せようとか考えてたじゃねぇかよ。


「ちょっと抜けてきた」

「抜けてきたって…」


呆れながらも、体を起き上がらせる。


ふと顔を上げるとすぐ側にロイドがいた。

ロイドのグローブを外した指が俺の目尻に触れる。


「…やっぱり泣いてた」


何で、そう言った声は酷く掠れていた。

それでもロイドにはちゃんと聞こえていたのか、頬をひと撫でして離れていった。

少し名残惜しかったけれど、俺にそんな事言えない。


「なんとなくさ」


ロイドと目が合う。



「ゼロスが泣いてるんじゃないか、ってずっと思ってたんだ」


目が、熱い。

拭っても拭っても、それ止まらない。


「…ご、めん。ごめん、ロイドっ…」


また、あの時みたいに鳴咽が抑えられない。

でも今は、泣けば少し困ったように笑ってロイドが近くに来てくれる。


あぁ、本当に目の前にいるのはロイドだ。

俺を闇から救ってくれたロイドだ。


ロイドはずっと俺を信じて1人で戦ってきたのに。

それなのに。



「…俺、は…っ…ロイドを、信じている事ができなかった…!」



そう言ったのに、なぜかロイドは笑った。


「俺があんな手紙だけ置いて行ったんだ。信じろっていう方が難しいだろ?お前を裏切ったも同然だ」

「違う…!」


ロイドは裏切ってなんかない…!

叫べば、ロイドはまたふっと笑った。


「そうだ、お前は考えすぎるんだ。考えて考えて、よくわからなくなって不安になって。でもゼロスは心の奥底で俺を信じていてくれたんだ」


お前の事はお前より俺の方が知ってるんだよ、と悪戯っ子のように笑うロイドを見て、また涙が溢れた。

そんな俺を見てロイドは笑って俺を抱きしめた。


「なにより、ゼロスは俺の居場所を作ってくれて、ちゃんと待っていてくれた。俺は、それだけで充分だよ」


嬉しくて、温もりをもっと感じたくて、ロイドの胸に顔を埋めた。


「ゼロス」


顔を上げればまた目が合う。





「――ただいま、ゼロス」




目の前には、ずっと待っていた優しい顔。




「――っおかえり!ロイド!」




――END――


(淋しくても、ずっと待ってたから)

(今まで居なかった分、たくさん甘やかしてね?)


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