テイルズ短編
□泣かない泣けない泣いていい
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あいつは、泣きそうな顔をするのに泣かないんだ。
もう、自分を許したっていいのに。
「だって、俺はお前たちを裏切ったんだ」
「でも、ゼロスはちゃんと帰ってきただろ」
「裏切ったことは、その事実は消えない。俺が一生背負うものなんだ」
「俺は、お前の重荷になるくらいなら。俺は俺を許せない。消してやる」
「…意味、わかんねぇよ…!ふざけんなよ。なんだよ、消すって。お前は、関係ないだろ…!これは俺の…!」
「俺はな、我が儘なんだ。お前を苦しめたくないのに、お前の側に居たいんだ。俺の隣に居て欲しいんだ。だから、隣に居られないくらいなら、消えたっていいんだ」
「……もう、泣き方なんて忘れたんだよ…!」
「はは…ほんと、俺らって馬鹿だよな」
くしゃりと顔を歪ませるあいつ。
あぁ、また泣きそう。
でも、その瞳からは何も零れないんだ。
「ゼロス、俺の前だったら、いくらでも泣いていいんだ。だから溜め込むな。お前の罪は、俺も背負うから。お前だけのものになんかさせないから」
両手を広げて待っていても、ゼロスは飛び込んできてはくれないのだから、自分から包んだっていいだろう?
「もう、いいんだよ。ゼロス」
でもやっぱり背中に手をまわしたりなんかはしてくれないけど、してくれるまで、いつまでも、何度でも包んでやろう。
なんて、腕の中にある赤と服を湿らせる雫に目を閉じて、そう思った。
――END――
―――――――
書きたいことだけ書いたらなんか酷い。満足だけれども。