フリリク

□privilege
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ガイルク
―――――――



髪を切って、ますますルークは可愛くなったと思う。

いや、屋敷に居た頃の俺様我が儘ツンデレルークも可愛いかった。

だが、それらが薄れてプラス健気ときた。

あぁ、なんて可愛いんだ!





「…ガイ、その…俺ばっかじゃなくって、店の品物見ようぜ…?」


それよりルークを見ていた方が楽しい。

だが、これはPTで大切な買い出しだ。


「あぁ、悪い悪い。…で買う物は、っと」

「……」


ルークがじと目で見てくるが、生憎俺は良い林檎を見極めるのに精一杯なんだ。

悪いな、ルーク。




「…よし、ここで買うのはこれだけだな。次行こうか」

「荷物持つってば」


手をのばしてきたルークをひょいと避ける。


「いーんだよ、これくらい恋人の役割だろ?」


優しく笑ってやればルークは顔を赤くし、怒ったような顔をする。

俺にはそれが照れ隠しだって知っている。


「〜〜っ何言ってんだよ!ほら、さっさと行くぞ!」


顔を見られないようにずんずん大股で先を歩くのもそうだと知っている。

こういう所は、何も変わっていない。


「待ってくれよ、ルーク!」


慌てて追いかける。

意外とルークは足が早いようだ。

まぁ、追いつけないのは人込みのせいというのもあるだろうが。


すみません、と謝りながら人込みを掻き分けてルークを追う。

すると、視界にルークだけでなく若い男達が入り込んできた。

ちっ、邪魔な。

あろうことか、その男達はにやにや笑ってルークに手をのばそうとしているじゃないか!


荷物を抱え直し、中に入った1番固そうな物を取り出す。



大きく振りかぶって、


投げる。



グシャア!!とその男の頭蓋骨が割れた音か、投げた林檎の割れた音かが響いて、ルークは慌てたように振り返る。

襟足らへんの髪の毛がぴょこっと動いて可愛い。


「な、何だ!?何で倒れてんだ!?」


あわあわと周りを見渡して、俺と目が合う。

目が合った瞬間、安心したように顔を緩めた。

…か、可愛い。

俺にはない筈の母性を擽られたような気分だ。

ルークは倒れた男の近くを通らないように回り込んで俺の元まで走ってくる。


「ガイ…!あ、あのな、何か後ろに居た奴がいきなり倒れてな…!俺、俺…!」

「大丈夫だ、安心しろ。俺が居るだろ?」


荷物のせいで片手でしか抱きしめられなかったが、ルークはほっとしたように力を抜いた。


「ほら、早く行こう。ルーク」

「おお。ガイが居れば安心だしな!」


満面の笑みを浮かべて俺を見てくるルークにつられて俺も笑う。

不機嫌な顔も照れ隠しで怒った顔も可愛いけど。



「やっぱりルークは笑っている方がいいな!」

「はぁ?いきなり何言うんだよ」



振り返ってさっきの男達を見る。

――ルークに触ろうとするのが運のつきだったな。

こっそりほくそ笑んでおく。



「おい、ガイー!行こうぜー!」

「待ってくれ、ルーク!」



――END――


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