フリリク

□overtake
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ガイルク
―――――――



前を歩く皆を見つめる。


俺が歩けば追いつけるような距離に見える。


けれど、実際はとても、とても遠くて。


走っても走っても、追いつけないんだ。



俺は『悪い子』だから。


アグゼリュスを滅ぼして、たくさんの人を殺して、そんな大変な事をしたのに、人間じゃなくて。


俺は最低だから。


人に罵倒されても、愚弄されても、仕方がないんだ。


…仕方が、ないんだ。






「…置いて行かないで」





呟いた言葉は真っ青な空に溶けて、誰にも届かないんだ。



…届いても、困るけれど。


もしも、この声に前を歩く誰かが振り返ってしまったら…




「――ルーク!」



びくり、と体が震えた。


蒼く澄んだ瞳が、真っ直ぐに俺を見てる。

綺麗な、瞳。



…駄目だ。



「…おい、ルー」

「ごめん!少しぼーっとしてたみたいだ!」



待っていてくれたガイの横を通って追い抜く。


早く、早く皆に追いつかないと。

ガイが俺の方にくる前に。

早く。


じゃないと、俺を守っているものが壊れてしまうような…。


辛いんだ。

怖いんだ。

痛いんだ。

守るものがないと壊れてしまう気がするんだ。



だから、俺は自分を守りたいなんて自分勝手な考えで、俺に手をのばしてくれる人を拒絶するんだ。




―――…寂しい、よ。




ぐっと唇を噛んで、未練を断ち切るように、走った。



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