フリリク

□強がりの仮面
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デクアリ
―――――――



視界がぐらぐらと揺れて、心なしか体も重い気がする。


「…うわぁ、酷い顔…」


顔を写す鏡を割ってしまいたい気分になる。

しかしそんな事をしたら、きっとデクスは傷ついた私の手を見て今よりもっとうざくなるんだろう。

はぁ、とため息をつき、顔を洗って身支度を整えて部屋を出る。


さぁ、部屋を出たんだから『私』じゃなく『アリスちゃん』にならないと。


『アリスちゃん』になる事は自分で決めたんだから、仕方のない事。




「アリスちゃん!今日は俺のところの隊と一緒なんだって!なんだかワクワクするね!」




動く体と連動するように揺れる青く長い髪を見て、ため息が漏れるのも仕方のない事。













僅かに漏れる木漏れ日の中、その光だけを頼りに私達は歩く。

じゅくじゅくと昨日の雨のせいだろうか、ぬかるんだ土に足をとられそうになる。

湿気もすごくて、髪の張り付く感触に苛立つ。



「アリスちゃん、大丈夫?」

「…うっざぁ〜。デクスうざいし暑いから向こう行っててちょうだい」

「…うん」


心なしかトーンの落ちた返事をしてデクスは離れる。

その行動に苛立つ自分がいる事に更に苛立った。






「この辺で少し休憩しましょう」


森の少し拓けた、川の流れる場所。


「ほら、自由にしてちょうだい。アリスあっちで休んでくるから」


隊員から離れて、向こうから見えない場所に座り込む。

息が上がり、汗が噴き出しているのが自分でもわかる。

拭う事すらおうちゃくで、背後に迫っていた影に気がつかなかった。





「―――アリスちゃん…!」





青、と、赤。



そして視界は真っ黒になった。



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