フリリク

□それは魔法と言えるような
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子ルク+ガイ
―――――――



クレヨンの独特の臭いが部屋を漂う。

あぁ、早く逃げ出したい。


「…ルーク、いつまで描いてるんだ?」


声をかければルークは振り返る。

憎らしい程ににこやかだ。


「もうちょっと!ガイはまだみちゃだめなの!」

「…わかってるよ」


そう言うとルークは安心したのか、また絵を描く事に没頭し始める。

10歳の子供が、だ。


ため息をついてルークの小さい背中を見る。


何故自分には見せないのか、とか、もうどうでもいい。

ただ、このぐるぐると嫌な思考に突き落とす臭いから解放されたい。


(早く終われ)


そもそもなんでルークは絵を描きたいだなんて言い始めたんだ。

いつもは勉強とか、紙に向かって何かする事を嫌がるくせに。



別人だ、別人だ、そう言う屋敷の人間の声が頭の中に響く。

誘拐される前のルークは大人びていて、勉強もできて、作法もきちんとしていた、と。


俺は前のルークに良い印象なんてなかったし、何よりただ早く殺したかった。

殺したくて殺したくて仕方がなかった筈なのに、この目の前の子供には何故か同じ気持ちは湧かなかった。

真っ白で、きらきらした瞳を向けられたら、そんな事を考えられなくなった。


…俺は、ルークをどうしたいんだろう。


決意を鈍らせるあの瞳が憎い。

言う事を聞かないで我が儘な所が憎い。

けれど、あの笑顔を見たら、何も言えなくなってしまう。


(…俺、は…)




「――ガイ!」



はっと、ルークの声で意識が戻ってくる。

いけない、考え込んでしまったようだ。


「あ、あぁ。どうした、ルーク?」

「できた!」


目の前に突き出された紙に描かれたのは、とても10歳が描いたとは思えないような下手くそな絵。


「…これは…」


下手くそだけど、一生懸命描いたという気持ちは伝わってくるような、不思議な絵。


「…俺?」


問い掛ければ、ルークは眩しいくらいの笑みを浮かべて頷いた。



「ガイ、だいすきだよ!」



そう言って抱き着いてくるルークに、さっきまでの嫌な気持ちなんてなくなって、



「…俺もだ。ルーク」



ただ、目の前の子供を愛おしく思った。






――END――





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