□産まれたことが罪だった。
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「ゼロス!なんで!?」


ロイドの問いにくすりと笑いを漏らす。

その笑いはロイドに対してなのか、自分に対してなのかはわからなかったが、そのまま笑い続けた。


「お前らのやっている事は全部無駄なんだよ」


剣を抜けば、ロイドは絶望と困惑を混ぜたようなよくわからない顔をして呆然と立ったまま。


「やるからには、本気でいこうや」


情けない顔。

また同じように笑って、ロイドへと走り出した。










ごぷりと口から血が溢れて、体が崩れ落ちた。

視界に映る赤は、『あの人』の赤と同じ色をしていて、自然と笑いが漏れた。


「ゼロス…!」

「…は、…これで…セレスも自由に…」


自分が壊してしまった、彼女の幸せ。

今の神子が死ねば、次の神子は彼女だ。


「アンタ、まさかその為に…」


ついでだよ、と答えた声は嫌に掠れていて、もうすぐ自分の終わりなのだと改めて感じた。


ふと、空を見ていた視線を『仲間達』へと移した。

皆、痛そうに顔を歪めていた。


違う。

違うんだ。

そんな顔をさせたかったんじゃない。


何で。

何で。

皆幸せそうな顔をしないんだ。

もうすぐ、神子は死ぬのに。



「…ゼロス、死ぬな…!」



誰のかわからない言葉。

それでも、温かさだけは感じられて…




産まれたことが罪だった。



ずっと、そう思っていた。

でも、それは違ったみたいだ。


しいて言うなら、皆にこんな顔をさせている事が罪?



「…罪作りだなぁ、俺さま…」



まどろむ意識の中で、最後に感じた温もりは優しくて、もうあの時の夢は見ないんだろうな、とどこか遠くで思った。









お題配布:白い華


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