あ
□切った髪は時間と思い出
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俺は、ずっとこの生活が続くと思っていたんだ。
平凡で、平穏な、つまらない暮らし。
朝起きて、飯を食べて、嫌々勉強して、飯を食べて、稽古をして、飯を食べて…
同じ事を繰り返す毎日。
つまらない。
ずっと、変化を求めていたんだ。
でも、これは俺の望んでいたものじゃない。
師匠に騙されて、たくさんの人を殺して、皆に呆れられて、幻滅されて。
俺じゃない。
アクゼリュスの人を殺したのは俺じゃない。
この罪を誰かになすりつけないと、自分が保てなくて…
皆は離れてしまった。
まるで俺を拒絶するように、扉は無機質な音をたてて閉まった。
その音が、今でも耳鳴りのように響いて、怖くて、怖くて、痛いんだ。
また、皆に拒絶されて、捨てられてしまうんじゃないかと思うと、息が苦しくなって、辛いんだ。
小さくなる皆の背中を見て、短くなった髪に触れる。
あぁ、いつから俺はこんなに臆病になってしまったんだろうか。
あの頃の、我が儘で、弱い俺でもいいから、今は側に居て欲しいと思うなんて。
切った髪は時間と思い出
あの頃の全てを無くしてしまったように、ぽっかりと開いてしまった心。
こんな気持ちになるくらいなら、俺は最初から変化なんて求めてはいけなかったのかもしれない。
今更、どうあがいても取り戻す事はできないけど。
お題配布:白い華