□鳥になりたいと望んだ
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「えー!今日師匠来れねぇの!?」

「何でも仕事が立て込んでるみたいでな」


不機嫌そうに顔を歪めるルークにガイは苦笑して答えた。


(まるで、本当の子供みたいだ)


ルークが構ってもらえなくて拗ねている子供のように見えて、またガイは苦笑を漏らす。

その笑いを見てルークは眉を吊り上げ、苛立ったように髪をかき上げた。


「ちっ、師匠が来ねぇなら仕方ないからガイで我慢してやる」


傍に置いてあった木刀を手にとり、ルークは大股で庭の方へずんずんと歩いて行く。

当たり前のようにガイが追い掛けてくると思っているのか、止まる様子はない。


「…はぁ…待てって!ルーク!」


小さくため息をついて、ガイは駆け足でルークの後を追った。












「…っは…はぁ…」

「なんだ、ルーク。もうへばってるのか?」


息を荒げ、座り込むルークにガイは近付きながら言葉をかける。


「っは、うるせー…!」


今だに息をあげているルークにガイは笑みを零した。

そして、何故そこまで剣技を習得しようとするのか、ふと疑問に思った。



「なぁ、ルークは稽古をこんなに頑張って、どうしたいんだ?」



言ってからガイはしまった、と思った。

これでは、屋敷を出る事のできない、頑張るルークへの冒涜になってしまうのではないか、と。

罵倒が飛んでくるだろうと身構えたが、予想に反して返ってきた言葉は小さな声だった。


「…わかんね」


道に迷った子供のような、小さく掠れた声。


「頑張って、どうしたいんだろうな」

「…騎士になりたい、とか」


(…まぁ、たとえ願っても、その夢は叶わないんだけどな…)


ガイは早速後悔していた。

何故、こんな質問をしてしまったんだろうか。



「なりたいもの…、…あぁ、あるぜ」


その答えに、ガイは少し息を吐いた。

ルークは青く、晴れ渡った空を見上げて言った。









鳥になりたいと望んだ







まぁ、その願いが叶う事なんて無いんだろうけど。


嘲笑と共に漏らした言葉に、ガイは何も返す事ができなかった。













「だってさ、鳥になれたなら、この空を自由に飛べるんだろう?」











お題配布:白い華


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