あ
□覚める前に、もう一回
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目を開けば、窓から入る光に一瞬くらりとした。
「…ぅ…」
小さく呻いて、ゼロスは体を起き上がらせた。
顔にかかった赤い髪を退けつつ、ふと、横にあるベットへ目を向ける。
口を開けてよだれを垂らしながら眠るロイド。
さすがに、眠る時は赤い服は着ていない。
(…ロイドくんより先に起きたの初めてー)
ロイドは旅に出る前からの習慣なのか朝起きるのが早く、ゼロスが起きる頃にはもう着替えも済んでいて、朝の鍛練をしているのもよくある事だ。
少し考えるようにロイドを見つめた後、ゼロスはベットから下り、ロイドへ近付く。
「…幸せそうな顔しちゃってさー…」
いつもロイドの方が起きるのが早いせいか、初めてみるロイドの寝顔にゼロスは不思議と笑みが零れた。
しかし、いくら見た事のない物でもずっと見ていればさすがに飽きる。
ゼロスは意地の悪い顔をして笑った。
「起きないロイドくんが悪いんだぜ〜」
1人ごちて、そろりとロイドに手をのばす。
つん。
柔らかい頬に指を刺す。
「…ぅ」と呻いたロイドに一瞬びくりとしたが、ロイドはまだ眠ったままなのを確認し、そのまま指で突く。
つんつん。
くすくすとゼロスは小さく笑いながらロイドの頬を指で突き続ける。
子供みたいに柔らかい頬。
自分でも何が面白いんだかわからないが、やめられない。
覚める前に、もう一回
(俺が飽きるまで、起きないで!)
「…ゼロス、何やってんだ…?」
「ぅえ!?い、いや!別に〜?」
慌てて突いていた手を戻す。
「…そうか」
寝起き特有の掠れた声にどきりとしたなんて、言えない。
赤くなった顔を隠すように、ゼロスは急いでロイドから離れた。
「…期待してたのに…」
だから、ロイドがそう呟いた事にゼロスは気がつかなかった。
ゼロス+ロイドのつもりだったのにロイド→(←)ゼロスみたいになってしまったという罠。
お題配布:それもひとつのラプソディア