あ
□冷たくて、あったかい、君が好き
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ふぁ、と欠伸と一緒に間の抜けた声が漏れた。
眠くて目を擦っていると遠くからこちらへ歩いて来る可愛らしい姿が見えて、つい顔が綻ぶ。
「アリスちゃーん!」
ぶんぶんと風を切る音が鳴るくらいの勢いで手を振ればアリスちゃんは嫌そうな顔をしたように見えたけど、そんなの気にしちゃ駄目さ!
「…あらぁ、3Kデクスじゃなぁい。今日は早いのね。まだ全っ然寝ててよかったのにぃ」
鈴のような声から発っせられる言葉にどことなく刺があるように感じても、気にしちゃ駄目さ!
照れ隠しなんだよね!
「デクス顔きも〜い」
「ぐっ」
気にしなくても痛いものは痛いんだ。
違う違う。
今日何の為に早起きしたんだか思い出せ自分!
「アリスちゃん!一緒に朝ご飯食べよう!」
「嫌よ。何で私が3Kなんかと…」
「俺いいお店知ってるからさ!ね!」
少し強引にアリスちゃんの手をとって歩き出す。
ちょっぴり強引なくらいがイイ男なんだよね!
そう雑誌に書いてあったし!
「…バッカじゃないの」
「どうだった?アリスちゃん」
「まぁまぁね。悪くはなかったわ」
「そっか!よかったー」
ふにゃりと顔が緩む。
その顔のままアリスちゃんを見つめていると変な顔をされた。
「…何でアンタは私に付き纏うのよ?」
真剣な瞳で、じっと見られる。
ちょっぴり照れちゃうな、なんて場違いだとわかっていても思った。
「何でって…アリスちゃんが好きだからだよ」
「……」
まるで嘘だとでも言うような顔でアリスちゃんは俺を見てくる。
嘘じゃない。
嘘じゃないよ、アリスちゃん。
「っきゃ!」
薄い金の髪に顔を埋める。
滅多にできない事だから今のうちに目一杯その感触を楽しむ。
「な、に…してんのよ」
「ぎゅってしてる」
そう、抱きしめているんだ。
俺が、アリスちゃんを。
「アリスちゃん」
真っ直ぐにアリスちゃんを見つめて、言う。
冷たくて、あったかい、君が好き
「…バッカじゃないの」
アリスちゃんが俺の胸に顔を埋めたから、くぐもっていたけれどその声は確かに聞こえた。
「耳、赤いよ」
「…馬鹿」
そっと背中に回ってきた細い手に、笑顔が零れた。
あぁ、もう、本当に
「大好きだよ!アリスちゃん!」
お題配布:それもひとつのラプソディア