あ
□言わなくなった言葉
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視線を前にやれば、短くなった朱い髪が見える。
皆の先頭を歩くのは、ルーク。
前のように1人で歩いて行く事はなく、皆のペースに合わせている。
だけど、ルークの傍には誰もいない。
酷くルークの背中が小さく見えて、駆け寄り声をかけた。
「ルーク。疲れてないか?」
ルークは少し驚いたように振り返った後、ふわりと笑った。
「大丈夫だよ、ガイ。俺は、平気だから」
前だったら、俺が何か言う前に「だるい」と言っていただろう、と思うと…なんだかよくわからない気持ちになった。
「そうか。無理はするなよ?お前はほっとくとやり過ぎるからな」
「…ば…っわかってる…」
何故かルークは少し目を伏せた。
しかしそれは一瞬の事で、すぐにさっきまでと同じような笑みを浮かべ、前を向いて歩き出した。
その後ろ姿を見ながら、どこか違和感を感じた。
『ダリィー…、全然平気なんかじゃねぇよ。疲れた。休むぞ』
ふっと、あの頃の長い朱金を思い出した。
笑って、泣いて、感情が顔に出る子供だった。
(あぁ…)
ルークは、いつの間にかこんなに変わっていたんだ。
「…いや、変われと求めたのは俺らか…」
言わなくなった言葉
『馬鹿』
今は、あの悪態が聞きたいよ。
「…ルーク」
だから、そんな悲しい顔で笑わないでくれ。
お題配布:白い華