テイルズ短編

□Pair Ring
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デクアリ
―――――――



「アリスちゃーーん!」


遠くから叫ぶ声。

アリスははぁ、とため息をついた。

どたどたという音が近づいてくるが、無視して歩くスピードを早める。

ここで立ち止まれば、デクスは調子にのって更にウザくなる事は、アリスにはわかっていた。


「待って、待ってば!アリスちゃん!」


息も絶え絶えなデクスに手を掴まれ、アリスはちらりとデクスを見ただけで立ち止まる事はなかった。

ゼェハァと息遣いがウザい。

何よ、と冷たい声で問いかければ、デクスはにこりと笑った。


「一緒に買い物に行こう!」


花が咲いたような笑顔。

アリスは少したじろいだが、すぐにいつもと同じ表情を作った。


「嫌よ、何で私がアンタなんかと」

「せっかく同じ日に休みなんだし、いい考えだと思うんだけど…」


嫌よ、ともう1度アリスが言えばデクスはめげる事なく言葉を続けた。


「ご飯だって奢るし、アリスちゃんの欲しい物だって買うよ!」


ピタリとアリスの足が止まり、つられてデクスの足も止まる。

どうしたの、と心配そうなデクスの声が長い廊下に響き、少しエコーがかかって聞こえる。

心なしか揺らいだように見える金の瞳がデクスをとらえた。


「…奢り?」

「勿論おやつもつけるよ!」

「!」


アリスの瞳が更に揺らぐ。

迷っている証拠だ。


無言の時が過ぎる。


先に口を開いたのはデクスだった。


「…ア、アリスちゃ…」

「…いいわ」


耐え切れずアリスの名前を呼ぼうとしたデクスの声をアリスが遮った。

え、とデクスが小さく声をもらす。

ちらりとデクスが上目でアリスを見れば、耳は赤く染まっていて必死に顔を見せまいと背けていた。

え、え、とデクスが更に困惑したようにもらせばアリスは怒ったように振り返った。


「一緒に行ってあげるって言ってんのよ!あぁ、もう!ウダウダしてんじゃないわよ!」


さっさと行くわよ!と叫ぶとアリスは出口へ早足で駆けて行く。


「ま、待ってよ!アリスちゃん!」


デクスは慌ててアリスの後を駆けて行った。




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