テイルズ短編

□Pair Ring
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目の前の人込みを見つめながらアリスは低い声でデクスの名前を呼ぶ。

微笑みながら何?と言うデクスに殺意を覚えながら、アリスは笑顔を作って言葉を続けた。


「アリスちゃん帰るね」

「待って!帰らないで!」


帰らないで帰らないで、と喚きながらアリスの腰に抱き着くデクスに呆れる。

本当に年上か。


「こんな人込み嫌よ、私は」

「じゃあ裏道を通って行こう!」


どうしてコイツはそんなに私と一緒に行きたいんだろう、と考えたが答えなんて出る筈なく、アリスは考える事を止めた。


「…もう、いいわよ…。さっさと行くわよ…」


ようは諦めた方が負けなのだ。












「アリスちゃん、アリスちゃん。これなんてどう?」


微妙、そう言って目の前に列んだアクセサリー達を眺める。

綺麗に列べられたそれらは無機質な筈なのに、太陽の光に照らされきらきらと美しく輝いていた。

ふと目に入った指輪を手にとる。


「それ、欲しいの?」


別にそんなんじゃ…と呟き、アリスはうろうろと視線をさ迷わせる。


「買ってあげるよ」


でも…、とデクスは言葉を続けた。



「それ、ペアリングみたいだよ?」





アリスは何も言わず、それを戻した。


「ちょ、買おうよ!ね!」


何がね!だ、と思いながらアリスはデクスを睨みつける。


「…誰がつけるのよ」

「俺!」


俺以外がアリスちゃんとペアリングなんてしてたらソイツ殺しちゃうかも、なんて笑顔で言った。

アリスは「…勝手にすれば…」と呟き歩き始める。


遠くからデクスの声が聞こえたが、アリスは気にする事なく歩き続けた。




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