テイルズ短編
□待ってるから
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寒くて、目が覚めた。
「…ロイド…?」
さっきまであった温もりを探して体を動かしたけど、
温かさなんてなくて、
俺の隣は冷たかった。
「ッロイド!」
急いで起き上がる。
部屋を見渡すが、誰もいない。
もちろん、ロイドの服も靴も剣も、全てない。
「…ロイ、ド…」
ぽろぽろと、涙が落ちる。
でも、今はその涙を拭ってくれる人はいなくて…
おいていかないで、って言ったのに。
ロイド君がいないんじゃ、生きてる意味なんてないのに。
なのに、
「…ロイド…!」
鳴咽が抑えられない。
頬を伝う涙がウザかったけど、拭う余裕なんてなくて。
ふと、机に紙が置いてある事に気がついた。
震える手で、それを手にとるとそこには
ごめん。
急な用事で行かなきゃならなくなった。
絶対、ゼロスのところに帰るから。
待っててくれ。
ロイド
不格好な、とても上手いとは言えない字で、そう書いてあった。
「ば、かやろ…」
握りしめると紙ではない別の固い何かの感触がした。
そっと手を開くと、そこには綺麗な髪止め。
そういえば、前に髪を切ろうかと話をした時…
『切るなよ!勿体ないだろ!』
って怒られたっけ。
くすり、と笑いがもれてくる。
「髪、切らずに待っとけって事かよ…」
待ってるから、
いつまでも、ロイドが帰ってくるのを、待ってるから。
そしたら、ロイドはちゃんと帰ってきてくれるんだよね…?
髪止めを握りしめ、俺は大声で泣いた。
なんとなく、そうしていればロイドが帰って来てくれるような気がして。
ただ、泣いた。
――END――.