テイルズ短編
□Strawberry!
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「町で可愛いハニー達に貰ったんだよ。いっぱいあるから貰って下さい、って言われたから有り難く貰ったって訳」
「あぁ、そういえば今って苺の季節なんだっけ」
忘れんなよ〜、と茶化しながらもゼロスはひょいひょいと苺を口へ運ぶ。
ロイドはその行動を目で追う。
――ヒョイ
――パク
――ヒョイ
――パク
じっと、ただ目で追う。
「…――あぁ!もう!」
ゼロスは沈黙やロイドの視線に耐えられなくなったのか、叫び声をあげてきっ、とロイドを睨む。
鋭いゼロスの視線にロイドは「何だよ?」ときょとんとして聞く。
「こっちが何だよ?だよ!じ〜っと見やがって」
「何って聞かれてもなぁ」
何となく?とロイドは当たり前のように答える。
ゼロスはげんなりとして頭を抱えて、少し考えるようにした後ハッとしたように顔を上げた。
「わかった!ロイド君はコレが食べたいんでしょ〜。甘いぜ〜」
ほれほれ、とロイドの顔の前で苺を振る。
それでもロイドはちらりと苺を見ただけで、食べようとしない。
「…え〜、何?どうしたのよ」
ゼロスが心配してロイドの顔を覗き込むが、ロイドはじっとゼロスの顔を見るだけ。
なんとなく気恥ずかしくなってゼロスは少し早口で「毒とかは入ってないぜ?」と言ってひょいと苺を口に含む。
「あ、ちょっと食べたいかも」
「あ、やっぱり〜?」
よかった、と言ってゼロスはまたロイドの前に苺を出す。
「はい、ロイド君あ〜〜…ん」
視界いっぱいの顔。
(……ぇ…?)
ゼロスが疑問に思った時、その顔は離された。
手にはまだ苺が残っている。
「…たしかに、甘いな」
してやったり。
今のロイドの表情を言葉で表すとしたらそんなところだろう。
ロイドが自分の唇を舌で舐める。
ゼロスにはその仕種が酷く官能的に見えた。
「…――ッ!」
理解したのか、ゼロスの顔が徐々に赤く染まっていく。
「怒ってるのか?恥ずかしいのか?」
純粋に質問したのだろうが、ロイドの問い掛けにゼロスは体をわななかせ、叫ぶ。
「どっちもだよ!」
ゴン、と鈍い音の後、ロイドの悲痛な声が部屋に響いた。
――END――
(少し嬉しかったなんて、言ってやらない!)
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