テイルズ短編

□Strawberry!
2ページ/2ページ



「町で可愛いハニー達に貰ったんだよ。いっぱいあるから貰って下さい、って言われたから有り難く貰ったって訳」

「あぁ、そういえば今って苺の季節なんだっけ」


忘れんなよ〜、と茶化しながらもゼロスはひょいひょいと苺を口へ運ぶ。

ロイドはその行動を目で追う。



――ヒョイ

――パク


――ヒョイ

――パク




じっと、ただ目で追う。



「…――あぁ!もう!」


ゼロスは沈黙やロイドの視線に耐えられなくなったのか、叫び声をあげてきっ、とロイドを睨む。

鋭いゼロスの視線にロイドは「何だよ?」ときょとんとして聞く。


「こっちが何だよ?だよ!じ〜っと見やがって」

「何って聞かれてもなぁ」


何となく?とロイドは当たり前のように答える。

ゼロスはげんなりとして頭を抱えて、少し考えるようにした後ハッとしたように顔を上げた。


「わかった!ロイド君はコレが食べたいんでしょ〜。甘いぜ〜」


ほれほれ、とロイドの顔の前で苺を振る。

それでもロイドはちらりと苺を見ただけで、食べようとしない。


「…え〜、何?どうしたのよ」


ゼロスが心配してロイドの顔を覗き込むが、ロイドはじっとゼロスの顔を見るだけ。

なんとなく気恥ずかしくなってゼロスは少し早口で「毒とかは入ってないぜ?」と言ってひょいと苺を口に含む。


「あ、ちょっと食べたいかも」

「あ、やっぱり〜?」


よかった、と言ってゼロスはまたロイドの前に苺を出す。


「はい、ロイド君あ〜〜…ん」



視界いっぱいの顔。


(……ぇ…?)


ゼロスが疑問に思った時、その顔は離された。

手にはまだ苺が残っている。


「…たしかに、甘いな」


してやったり。

今のロイドの表情を言葉で表すとしたらそんなところだろう。


ロイドが自分の唇を舌で舐める。

ゼロスにはその仕種が酷く官能的に見えた。


「…――ッ!」


理解したのか、ゼロスの顔が徐々に赤く染まっていく。


「怒ってるのか?恥ずかしいのか?」


純粋に質問したのだろうが、ロイドの問い掛けにゼロスは体をわななかせ、叫ぶ。


「どっちもだよ!」


ゴン、と鈍い音の後、ロイドの悲痛な声が部屋に響いた。



――END――


(少し嬉しかったなんて、言ってやらない!)
.

前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ