テイルズ短編

□待ってるのは
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コツン、皆が寝静まった静寂の中に響く音。

靴の音だ。


気になって窓の外を探す。

なぜか、そうしなきゃいけないような気がする。


「…――ぁ…」


ひゅっと喉が音をたてた。

遠くに、赤。


懐かしい、赤だ。


「…ロイ…」


ロイド。

見間違える訳ない。

あれは、ロイドだ。


また消えてしまう前に急いで部屋を出ようとしたが、足が止まる。

根づいたように、動かない。



俺は、ロイドに会っていいの?

こんな、大好きな人を信じられてない俺が…

あの優しい温もりに触れていいの?


「…ぅ…」


恐いんだ、俺は。

また、大切な人がいなくなってしまうんじゃないかって。

そう思ったら本当に足は動かなくて。


振り返って窓の外を見ても、もうあの赤はいない。

ぼろぼろと涙が零れる。


泣き過ぎだ、俺。


自嘲しようとしても、口から出るのは鳴咽だけ。



「…会い、たいよ…。ロイドぉ…!」


会えばきっとこの気持ちの答えがわかるんだ。

…そうだろ、ロイド。


今縋れるのは、手の中のきらりと光る物だけ。




――END――


(待つのは辛くて、恐いよ)
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