テイルズ短編

□子供体温の君
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ひゅっと剣が風を切る音が鳴り、ロイドは白い息を吐いた。


「…寒いな…」


(やっぱり雪積もってるのにやるんじゃなかったな…)


「足が滑る」などと1人ごちて、もう鍛練は終わりにしよう、と思い剣を仕舞って宿の中に入る。

きっとまだ赤毛の同室者は眠っているんだろう。

起きたくない、と駄々をこねる姿が目に浮かんで笑みが零れる。


扉を開けて部屋の中に入ると、案の定冷気が肌を刺した。

ベットの上には膨らんだ布団。


「ゼロス」

「……」


その膨らみに歩み寄って、軽く揺する。


「ゼーロス」

「……」

「ゼロスってば」

「……」


少し揺する力を強くする。


「朝飯、先食べるぞ」

「……」


はぁ、とロイドはため息をつきベットから離れようとしたが、服を掴まれたように進めなくなった。


「…ゼロス?」

「…行っちゃやだ」

「やだって…」


ロイドは困ったように声を漏らしてゼロスを見るが、手だけが布団から出てロイドの服の裾を掴み、体はまだ布団の中で丸まったままだ。


「ほら、起きろよ」


再び布団の膨らみを揺らすと、中からくぐもった、寝起きの掠れた声が聞こえた。


「…寒い…まだ寝たい…」

「…手ぇ離せって。俺腹減ったんだってば」

「ゔー…」


うめき声をあげるゼロスにまたため息をついて、更に強くなった服を掴む力に、さてどうしようかと考えを巡らせていた時、


「ぅお…っ!?」


いきなり布団の中に引きずり込まれた。


「お、おい!ゼロス!?」

「…もー…ロイドくんうるさーい…」

「う、うるさいって…」


ゼロスに抱き込まれるように体が密着する。

どきりと心臓が跳ねた。


「…ロイドくん、あったかい…」

「そう、か…?」

「…ん」


再び静かになったゼロスにロイドはそっと背中に手を回して自分の方へ少し抱き寄せる。


(あぁ…リフィル先生に怒られるな…)


心地よい温もりに、ロイドは目を閉じた。







――END――


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