テイルズ短編
□relief
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フレユリ
―――――――
香ばしく甘い匂いが部屋の中に漂ってきたのを感じ、ユーリは椅子から立ち上がり、オーブンへ手をかける。
「お、いい感じ」
ひとり呟き、ミトンを手にはめてオーブンの中からカップケーキを取り出す。
昔から料理は出来たが、仲間と旅を始めてからはいろいろと凝ったりしたせいかその腕はかなり上達し、気がつけば料理をすることは趣味のようになっていた。
ユーリはカップケーキを全て取り出すと外に目を向けた。
夜もだいぶ更けてきている。
(……作り過ぎたな…)
そしてふと思ったのは、金髪の幼なじみのことだった。
(…そろそろ、仕事だって終わってんだろ)
もう寝てるかもしれないけれど。
そう思ったが、思い立ったら行動するのがユーリだ。
カップケーキを袋に詰めようと動き始める。
その瞬間、ひかえめなノックが扉を叩いた。
少し気分を害され一瞬顔を歪めたが、ユーリは手を止め、律儀にも扉へと歩く。
「はいはい、どちらさん……て、フレン?」
「…ユーリ…」
そう言うやいなや、フレンはユーリにぐたりと抱き着いてきた。
力が抜けた体がいきなりのしかかるように抱き着いてきたことによりユーリはバランスを崩しそうになったが、ギリギリで踏み止まる。
「っと、どうしたんだよ?」
「…足りない…」
「はぁ?」
くぐもった声が耳の側から聞こえる。
「ユーリが、足りないんだよ…」
苦しそうにするからなんだと思えばそんなことか、とユーリは少し拍子ぬけしたが、こんなフレンを放っておくことも出来ず、子供にしてやるかのように背中を優しく叩いた。
するとフレンはぐりぐりとユーリの肩に頭を擦り付けてくる。
「ほら、餓鬼じゃねぇんだから。そろそろ離れろって」
「…ん」
「…カップケーキでも喰うか?」
「うん」
まるで本当の子供のように素直な反応をするフレンに苦笑いをして、ユーリはフレンに離すように促す。
やっと離れたフレンにユーリは真っ直ぐにフレンを見つめた。
「あんま溜め込むなって」
「…わかってる」
「天下の騎士団長さまがそんな情けない顔すんなよ」
「…ユーリの前だけだよ」
その言葉にユーリは笑みを零す。
「…あと、会いたかったのはお前だけじゃないんだからな」
「……え」
そう言うと同時にぱっと体を離したユーリにフレンは固まる。
ユーリがカップケーキを取りにキッチンへ入ろうとした瞬間フレンの体は解け、頬を赤く染めた。
「僕も、大好きだよ!ユーリ!」
「て、めぇ、フレン!そんなことでかい声で言うんじゃねぇよ!」
「否定しないんだね」
そんな所も好きだよ、と微笑むフレンに、今度はユーリが頬を赤くした。
「…うるさい!ほら、喰うんだろ!運ぶの手伝え!」
「うん、わかった」
部屋に入ってきたときのフレンからは想像もできないような笑顔を浮かべ、フレンはユーリへと走った。
――END――