テイルズ短編

だってようは君が好き
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ジュイバ
―――――――



イバルは村の外れの草むらで座っていた。

周りに人はいる様子はなく、イバル1人だけだった。


「…あれ、イバル?」


かさりと草を踏む音と背後から聞こえた声にイバルは勢いよく顔を上げた。


「お前…!偽物!」

「もう…ジュードだってば」


後ろに立つジュードをイバルは睨みつけ、ふんっ、と鼻を鳴らしてイバルは空へと視線を戻す。

ジュードは苦笑いを零して、イバルの横に座った。


「…なぜ横に座るんだ!」


さっきよりも鋭く睨みつけてくるイバルにジュードはまた苦笑する。


「なんとなく。駄目だった?」


ジュードが少し悲しんだように顔を伏せると、イバルは慌てたように声をあげた。


「べ、別に駄目だとは言っていないだろう!貴様はそういう思考がいけないんだ」


つらつらと言葉を続けるイバルに、ジュードはふっと笑みを零した。


「ありがと、イバル」

「…っべ、別に…」


顔を背けたイバルの耳が赤くなっているのがジュードからは見えて、それにまた、ジュードは笑みを濃くした。


しばらくはお互い無言の時間が過ぎ、2人の間には風だけがそよいでいた。

空を見上げていたジュードの手に、何か温かい物が触れた。

ジュードが視線をそちらにやると、自分よりも健康的な肌をした手が自分の手に重なっているのが見えた。


「…イバル」


イバルには聞こえないくらいの声で、ジュードは呟く。

聞こえていない代わりに、ジュードはイバルの手を握った。


「…イバル。甘えてくれてるの…?」


ジュードがイバルの顔を見ながら言うと、イバルの元々赤かった顔はさらに赤くなった。


「あ、甘えてなどいない!自惚れるな!偽物のくせに!」

「イバル」


赤くなるイバルを見て、つい顔を緩めそうになったが、イバルの言った言葉に引っかかり、慌てて顔を引き締める。

顔を見ないようにしているのか、一生懸命ジュードから顔を背けているイバルに無理矢理顔をこちらを向けさせる。

琥珀色の瞳に見つめられ、イバルは口をつぐんだ。


「名前、呼んでよ」

「な…っ」

「名前」


ずい、と顔を寄せてくるジュードにイバルは思わず後退ろうとするが、腕を掴まれてすることはできなかった。


「…い、いまさらだろう…!」

「イバルが呼んでくれないのが悪いんじゃないか」


そう言われればぐぅの音も出ない。

押し黙ったままのイバルに、ジュードはふっと笑う。


「…イバ」

「ジュード!」


そう叫んだかと思えば、イバルはばっと繋いでいた手を離した。


「よ、呼んだからもういいだろう!さっさとどこかへ行け!」


そう言って顔を伏せたイバルに、ジュードは慌てて顔を覗き込む。


「行かないよ!…どこにも行きたくない。こんな可愛い君を置いてどこへ行くっていうんだ。イバルの側に居たいよ」

「……可愛いくなどない…」


「恥ずかしいやつめ…」と呟いたイバルの顔は赤く、それを見たジュードは笑って、イバルを抱きしめた。





――END――





―――――――
不完全燃焼。
恥ずかしがるイバルと嬉しくて堪らないジュード。


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