テイルズ短編
□ずっと探してた
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現パロ
―――――――
毎日夢に見ることがある。
俺は赤い服を着ていて、剣を振り回していた。
俺の周りには人がたくさんいて、皆が笑い合っていた。
でも、1人だけ、皆から少し離れて立っている人がいて。
それに気がついて、その人の顔を見ようとすると毎回目が覚めてしまう。
そして、今日も。
「――…ぁ、…」
のばしていた手が空を掴む。
握っていた手を開いてもやはり何も掴めてなんていなくて、冷たい空気が皮膚を撫でた。
両親はもう仕事に行ったのか、リビングはがらんとしていた。
いつものように着替えて、朝食を食べて、家を出て、学校へ行く。
家を出ると朝故にか、冷たい空気にぶるりと体が震えた。
「……寒い…」
寒いのは、この空気のせいだけなのか。
なんだかよくわからない気持ちになって、自然と早足になった。
―――−−‐‐
「なぁ、帰ろうぜー」
「…ん?あぁ…」
声をかけられて顔を上げれば、見知ったクラスメイトの姿があった。
のろのろと立ち上がれば、呆れたように笑われる。
付き合いが悪いわけじゃない。
寧ろいつも誰かが近くにいるから、いい方なんだと思う。
でも、何か、足りない気がしてならない。
ぽっかりと心に穴が開いたように、満たされない。
周りで笑うやつとは違う。
もっと別の、
「おい、あれ。見てみろよ」
「あれ…」
指を指された方には、赤い、髪。
「染めてんのか?それにあんな長いし。男だよな?制服そうだし」
「なぁ?」と声をかけてくる奴を無視して、1歩赤い髪へ近付く。
赤い髪は後ろを向いていて、顔は見えない。
でも、心の奥の方から沸き上がってくる気持ちに、歩みは止まらない。
穴が、埋まっていくような。
「…――ゼロス」
自然とその言葉が漏れた。
物なのか、場所なのか、名前なのかもよくわからないような、その言葉。
振り返った赤い髪はふわりと舞って、らしくもなくただ、綺麗だと思った。
「――遅ぇよ、ロイド」
赤い髪――ゼロスは俺の求めていた顔で笑って、俺の名前ではないけれど、確かに俺を呼んだ。
――END――
―――――
なんだか不思議な感じになってしまった。クラスメイトはただのモブです。ゼロスも他校の学生です。