テイルズ短編
□だってそれが君
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あいつを目で追うようになったのはいつからだろうか。
あいつに話しかけるのに緊張するようになったのはいつからだろうか。
あいつに、あいつに。
…なんだよ、もう。
―――−−‐‐
「…はーあ、最悪」
机に伏せれば体重がかかったせいか木の軋む嫌な音が鳴った。
そんな些細な事にも気分が落ち込む。
これがコレットちゃんみたいな子だったら、机に伏せたくらいじゃあ軋んだ音なんて鳴らないんだろう。
更に気分が落ち込む。
そして、そんな時に限ってあいつは俺の元に来るんだ。
「ゼロス?どうかしたのか」
今日も無邪気にあいつは俺に話しかけてきた。
顔を上げれば案の定少し心配したような顔をしたロイドだった。
「…べっつにー?あぁ、そういえばさっきガキンチョが探してたぜー?」
探してた、なんてただ早く離れて欲しくてとっさについた嘘だ。
だいだいこんな事を言えばロイドはどこかへ行ってくれる。
今日だって、そうだ。
俺の言葉にロイドは小さく感謝の言葉を言い、部屋を出て行った。
「…なんだよ、心配してたんじゃねーのかよ…」
出て行くロイドの背中を見て少し寂しく思ったなんて、嘘だ。
だから、この胸に渦巻くものだって、知らない。
そのまま目を閉じると視界は真っ暗になって、何かを考えているよりはずっとマシかと思い、そのまま意識を飛ばした。
―――−−‐‐
揺さぶられる感覚に、目を開けた。
「…ん、…あ…?」
目の前にはロイドの顔が広がっていて、びくつかなかった自分を褒めたい。
「…え、ちょ、え?」
「あ、悪い。でも具合悪いならちゃんと布団で寝た方がいいぜ?」
そう言ってロイドは顔を引っ込めた。
「…や、なんで居るのよ?」
「ゼロスが心配だったから」
体を起こそうとした微妙な体制で固まってしまった。
当然だろう、と言いた気な淀みの無い澄んだ琥珀色と目が合って、ふっと笑いが漏れた。
「……ロイドくんらしーや」
ため息をつけば、自然と体から力が抜けた気がした。
そうだ、ロイドはこんな奴なんだ。
こっそり笑って、目の前にあったロイドの服についてるひらひらで遊んでたらロイドがちらりと視線を寄越した。
「?なんだ、ゼロス」
「んやー、そういえばロイドくんってば馬鹿だったなーって思って。馬鹿で熱くて真っ直ぐで」
「…俺けなされてんのか?」
ふて腐れたように頬を膨らませたロイドに今度は堂々と笑ってやって、勢いよく立ち上がった。
「あーぁ、やっはぐだぐた悩むなんて俺さまらしくないないっつーの!」
「急にどうしたんだよ?」
「なんでも!なぁロイドくんお腹減った。なんか食べに行こーぜ。ついでに奢って」
「はぁ?別にいいけど…奢るのか?」
ちらりと横を歩くロイドに目をやる。
そうだ、今はこれでいい。
「ロイド」
「ん?」
「これから、覚悟しとけよ」
にやりと笑ってやれば「そんなに喰うのか!?」と見当はずれのことを言っていて、また意地悪く笑ってやった。
(俺さま、本気になるとすごいんだぜ?)
さて、まずは何を奢ってもらおうか。
――END――
――――
たまにはゼロスの片思いとか書いてみたいなって思ったらなんかロイゼロっぽく無くなった。