テイルズ短編
□Hay Fever
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「くしゅんっ」
背後で聞こえた小さなくしゃみにロイドは足を止めた。
「風邪か?ゼロス」
「ん?あぁ、いや…くしゅっ」
続くそれにロイドはゼロスに歩み寄って顔を覗き込む。
ゼロスは顔を歪めて背けたが、ロイドは気にすることなく言葉を続ける。
「目ぇ少し赤いな…」
「さわんな」
避けられた手に少しむっとしたが、それでも瞼に触れてやれば観念したように目を閉じた。
そのままロイドは撫でるように頬へと手を滑らせる。
「…くすぐったいってー」
「熱は無いみたいだな」
「……あー、だからこれは風邪じゃなくってね?……あー…」
ゼロスの言葉が詰まる。
「なんだ?」
「……花粉症、なんだよ。俺さま」
ロイドは首を傾げて「…カフンショー?」と復唱した。
「…ロイドくん、花粉症知らないの?」
「あ、あれだろ?なんかあれるぎーってやつなんだろ?」
「あー、うん…」
曖昧な返事の後、諦めたようにため息をついてロイドの手を引いてゼロスは歩き出した。
「どうした?」
「あー、もう早く宿行こうぜ!室内に入ればもう少しマシになるだろうしー」
「そうなのか!なら早く行ったほうがいいな!」
「ちょ、引っ張んなって!」
ぐいぐいと引っ張られてゼロスは躓かないようにしながらなんとかロイドについて行った。
―――−−‐‐
「どうだ?マシになったか?」
ベッドに腰掛けたゼロスがずっと鼻を吸ってロイドを見上げる。
心なしか目の赤みも引いた気がする。
「まぁ、外よりはマシだよ。相変わらず目ぇ痒いけど」
「何で早く言わねぇんだよ」
「……は、ずかしいじゃんかよ」
顔を伏せたゼロスの耳は赤くなっていた。
それを見てロイドは呆れたようにため息をついた。
「…何が原因で痒くなるんだ?」
ロイドは目を擦っていたゼロスの手を掴んで止めさせる。
やはり痒いのか、ゼロスはぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「杉花粉?とか」
「…その、スギカフンがお前を苦しめてんのか?」
「あ?あー、まぁそうかな…?」
ぐっとロイドの手を掴む力が強くなったかと思えば、ゼロスは抱きしめられていた。
「…え、ちょ」
「俺が、お前をスギカフンから守ってやる!」
「……はぁ?」
ゼロスは呆れた目でロイドを見た。
「…あのね、ロイドくん。花粉っていうのはね、ロイドくんがなんとかできるもんでねーのよ。わかる?」
「でも守るって決めたんだ。だから守る!」
「……あー、もう」
ぐしゃりと自分の髪を掻き交ぜるとゼロスはロイドの肩に顔を押し付ける。
「…ほんと、ロイドくん男前ー」
「気持ちはもらっとくぜー?」とロイドを見て笑った顔は少し赤らんでいた。
――END――
―――――――
方向性見失った。