テイルズ短編

□泣かない泣けない泣いていい
1ページ/1ページ




あいつは、泣きそうな顔をするのに泣かないんだ。

もう、自分を許したっていいのに。


「だって、俺はお前たちを裏切ったんだ」

「でも、ゼロスはちゃんと帰ってきただろ」

「裏切ったことは、その事実は消えない。俺が一生背負うものなんだ」

「俺は、お前の重荷になるくらいなら。俺は俺を許せない。消してやる」

「…意味、わかんねぇよ…!ふざけんなよ。なんだよ、消すって。お前は、関係ないだろ…!これは俺の…!」

「俺はな、我が儘なんだ。お前を苦しめたくないのに、お前の側に居たいんだ。俺の隣に居て欲しいんだ。だから、隣に居られないくらいなら、消えたっていいんだ」

「……もう、泣き方なんて忘れたんだよ…!」

「はは…ほんと、俺らって馬鹿だよな」


くしゃりと顔を歪ませるあいつ。

あぁ、また泣きそう。

でも、その瞳からは何も零れないんだ。


「ゼロス、俺の前だったら、いくらでも泣いていいんだ。だから溜め込むな。お前の罪は、俺も背負うから。お前だけのものになんかさせないから」


両手を広げて待っていても、ゼロスは飛び込んできてはくれないのだから、自分から包んだっていいだろう?


「もう、いいんだよ。ゼロス」


でもやっぱり背中に手をまわしたりなんかはしてくれないけど、してくれるまで、いつまでも、何度でも包んでやろう。

なんて、腕の中にある赤と服を湿らせる雫に目を閉じて、そう思った。







――END――







―――――――
書きたいことだけ書いたらなんか酷い。満足だけれども。


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ