テイルズ短編

□君の全部をとっておく
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現パロ
―――――――


ピロリン

あえて文字にするならこんなところだろう。

音が鳴ったもの、携帯を手に取った。


「ロイドくん」


自分でも少し声が跳ねたのが分かった。

メールのやり取りをするようになって結構たつ筈なのに、ロイドからのメールは今でも嬉しくて、少し緊張する。


「……乙女かっつの」


メールはたいしたことの無い普通の内容だった。

それでも、ロイドからというだけでこんなにも心が弾む。

簡単に返事をして、そして忘れてはいけないことがある。


「保護、っと」


これだけは、誰にも知られたくない。

引かれたら、嫌だし。

携帯を投げて、ベッドに潜る。


「………はずかしー、俺」


今までのロイドからのメールは全部とってあるなんて、


「……知られたら死ねるな、これ」


呟いて、誰にも見られていないとわかっていながらも赤くなっているであろう顔を枕に埋めた。


「…でも」


メールも嬉しいけど、


「会いたいなぁ」


枕で声はくぐもっていたが、そう呟いた瞬間、玄関のチャイムが鳴った。


「ゼーロースー!」


驚いて起き上がる。

布団が床に落ちたことなんか気にしていられない。

急いで窓を開けて身を乗り出す。


「ロイドくん!?なんで居んの!」

「なんかゼロスに呼ばれた気がしたから!」


よくそんな恥ずかしいことを、とかいろいろ思ったのに言葉になんかならなかった。


「…今開けるから、待ってろ!」

「おう!」


ロイドが眩しいくらい笑ったのを見て、駆け足で玄関へ向かった。


「ほら、入れよ。先に部屋行ってろ。なんか飲み物取ってくるから」

「おう、ありがとな」


何度も家に来てるからか、ロイドは迷わずに部屋へと歩く。


「……っはぁ!」


ロイドが部屋に入ったのを見て、息を吐いた。


「びびったぁ…」


まだ心臓がばくばくと音をたてている。

でも、驚いた以上に嬉しかった。

口元がにやけるのが止められない。


「…とにかく、早く飲み物を持って行かないと!」


あんまりほって置くといじけてしまうかもしれない。

急いで飲み物を用意して、部屋へ戻った、が。


「……何してんの、ロイドくん」


見つめるロイドの手の中には、開いた俺の携帯。


「…いや、開きっぱなしだったから…」


さすがのロイドも俺の声に何かを感じたのか、少し後退りする。


俺の携帯。

ロイドのメールが全部保護してある携帯。


「……見た?」

「………見た」


ロイドは静かに頷く。

ロイドのメールが全部保護してあるのを、見られた。


「ロイドくんの馬鹿ぁあぁぁぁぁあぁぁぁ!!」

「待てって、ゼロス!」


恥ずかさの余り部屋から逃げようとすればロイドに腕を掴まれた。


「離して離して!恥ずかしい!もう死ぬ!死なせてくれ!」

「だから待てって!話を聞けってば!俺、嬉しいんだよ!」

「………は?」


ついロイドの顔を見れば真っ直ぐな目で見つめられた。


「だって、好きな奴が俺とのやり取りを全部とっておいてくれたんだぜ?嬉しくない訳が無いだろ!」

「……そんなこと言われたら、出て行けねぇじゃんかよ…」

「うん、出て行かないで。俺に構ってくれよ」


腕を広げて待たれたら、その中に飛び込むしか無いだろう。


「メールばっかじゃなくて、本物の俺もちゃんとお前の中に残してくれよ?」

「…馬鹿、当たり前だろ」


既に、俺の中はお前でいっぱだというのに。

少し悔しくなって、ロイドの肩にぐりぐりと頭を埋めてやった。





――END――




―――――――
こっちが恥ずかしい。


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