ABYSS長編
□2話
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「ルーク、やっと帰って来れたな」
「…あぁ」
もう戻れない所まで来てしまった。
バチカルに着き、一行はファブレ家の屋敷へ来ていた。
「ルーク!お帰りなさいませ。無事だと信じていましたわ」
花が咲いたような笑顔でルークを迎えたのはナタリアだった。
いつもの笑顔で、ルークは少しほっとした。
「それでルーク、あの約束は思い出していただけましたか?」
心が冷えていくのがわかった。
ナタリアが求めている『約束』をしたのはアッシュだ。
俺じゃない。
この笑顔を向けられるべきなのは、俺じゃない。
ズキリと胸が痛んだ。
「母上が倒れた?」
ルークが居なくなって倒れた、と兵が伝えてきた。
(…母上が…)
温かく包み込んでくれたあの人も、俺を捨ててしまうのだろうか。
「ルーク、私も奥様に会って謝りたいの…」
「…こっちだ」
踵を返し、ルークはティアと共に歩き始めた。
少しの恐怖を抱いて。
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