ABYSS長編

□3話
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「何か言ったらどうですか?」


ジェイドの問いかけにもルークは反応せず、視線を向けることもない。


「…ルーク、何か言って下さいませ…」

「ちょっと〜、なんとか言ったらどうなの〜?」」


どの声にも反応しない。

瞳を動かすだけで、体はピクリとも動かない。


しびれを切らしたようにガイはルークの肩を掴む。


「おい、ルーク!」

「……ぁ…」


ルークは漸く気付いたように小さく声を漏らした。


(…視線が、合わない…?)


ルークは白く曇った瞳で宙を見ている。

普通なら、肩を掴んでいるガイを見る筈だ。


「ルー…ク、俺を見てくれないか…?」


いつもと同じような声の大きさの筈なのに、ルークは反応しない。



(ま、さか…)


まさか。


「…お前、目が…?」


恐る恐る、問いかけた。

周りの仲間達もその言葉に寄ってくる。


「…確認します。少し離れて下さい」


ジェイドは持っていたペンのようなライトでルークの瞳を照らす。

しばらく見ていたジェイドだったが、だんだん眉を寄せていく。


「…これは、見えていませんね。完璧に視力が失われています」


なんで、と誰かが呟いた。


「わかりません。そして私達の声に反応しないことから、恐らく…聴力も失われています」

「耳が、聞こえないのか…?」


ガイは目を見開いて呟く。

他の仲間達は皆何も喋らない。


「…ルーク…」


ガイはルークを抱きしめ、涙を流した。


今だルークの瞳は虚ろなままだったが、やがて静かに目を閉じガイの体に手をまわした。



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