ABYSS長編
□4話
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「ルーク…」
朱金の髪をすく。
さらさらで、枝毛なんてない。
「ルーク、どうしちゃったのかな…?」
アニスが誰にでもなく、問いかけた。
しかし、その質問に答える者はいない。
「…アニース、貴女だったらルークを心配するより罵倒すると思っていましたよ」
ジェイドが嫌な笑顔をアニスへ向ける。
それにアニスは口を尖らせ納得がいかないような顔をした。
「ぶーぶー!いくらアニスちゃんだって寝てる人にそんなことしません〜!」
「じゃあ起きたら罵倒するんですの?」
ナタリアの質問にうぐっ、とアニスは言葉に詰まる。
「…最初の頃の我が儘お坊ちゃんだったら、そうしてたかもしれないけど、最近のルークは何かおかしい気がしてたし、何てゆーか…」
「ようは心配なんだろ?」
「…そう、かも」
しれないと思う、とだんだん恥ずかしくなってきたのか、声は小さくなっていった。
そんな、場の空気が少し和んだ時。
ピクリ、とルークの手が動いた後、ゆっくりと目が開いた。
「ルーク!」
ガイは髪をすいていた手をルークの頭へ持っていき、撫でる。
「大丈夫か?…あ、と。耳が聞こえない、んだっけ…」
ごめん、と呟き、ルークを起き上がらせる。
「ルークが起きたのはいいが、どうやって言葉を伝えるんだ?」
「…そういったことは考えていなかったわね…」
ティアは考えるように黙り込んだ。
「…手に文字でも書いてみますか?」
ジェイドの提案にガイは頷き、ルークの手をとる。
静かな時間が生まれる。
「…だい…じょ、うぶ…」
ルークの声がした。
「ガイ、今貴方はなんて…?」
「『大丈夫か?』って書いたんだ」
ふう、とジェイドは息をはいた。
「これで、ルークとの会話が可能であるということがわかりました」
「…あぁ、本当に」
よかった、とガイはルークの掌に書いた。
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