テイルズ 

□ジュイバ
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ブゥブゥと聞こえた鳴き声の方にジュードは視線をやった。
ジュードにとって初めてブウサギを見たのはニ・アケリアに来てからだったためか、聞き慣れない鳴き声につい辺りを見回した。
少し歩けばその鳴き声の主はすぐに見えた。

「イバル...?」

イバルはブウサギの前に座り込んで何か話しているようだった。
ジュードは何をしているのかと話しかけようと口を開こうとしたが、イバルが少し動いたことによって見えた表情に声をかけるのを躊躇った。

(笑ってる)

それは自分には決して向けないであろう表情だった。
ジュードは少し息を吐いてまた口を開いた。

「...イバル!」

その声にイバルは肩をビクつかせジュードを見た。

「お前!なんでここに!」
「ブウサギの声が聞こえたからさ」

「ね?」とイバルの横に声をかけると元気のいい返事が返ってくる。
笑ってイバルの横まで行けばイバルは反論する気を失ったようにため息をついた。

「イバルって動物の言葉がわかるんだよね?」

イバルは鼻を鳴らして当たり前だと答えた。

「言葉がわかるってさ、どんな風にわかるの?」

それはずっと疑問に思っていたことだった。
どんな風に聞こえているのか、どんな風に会話しているのか、疑問だったがなかなか聞けなかったことであった。
その質問にイバルは一瞬きょとんとした顔をした後、視線をジュードから外した。

「俺から話す言葉は、今話している言葉と同じだ」
「人の言葉ってこと?」

そうだ、と返したイバルはブウサギと戯れ始めた。
ブウサギは少し無理な体制にされている気がしなくもないが慣れているのか抗議の声はあげない。

「こいつらには俺たちの言葉が理解出来ているんだ。どんな言葉も、全部」

前髪で表情は見えなかったが、声は酷く平坦であった。
その言葉の真意はジュードにはわからなかった。
視線を落としてジュードもブウサギを撫でる。

「イバルは優しいね」
「な...!」

いきなりの褒め言葉に反応できなかったのか、言葉を詰まらせてジュードを見たイバルの顔は赤く染まっていた。

「そ、それより!お前はどうしてここに来たんだ」
「理由がなくちゃ来ちゃ駄目なの?」

またイバルはぐっと声を詰まらせた。

「...お前は平気でそういうことを言う...」
「え?」
「なんでもない」

すっと立ったイバルは傍らにブウサギを連れて歩き出した。
いきなりな行動に驚いて座ったままだったジュードをイバルは足を止めてふり返った。

「何ぼーっとしてるんだ。...茶くらい、出してやる」

ぶっきらぼうな言葉にジュードは笑って返事をして、後を追いかけた。




ーーENDーー


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