小説

□花 後編
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 ざわざわっと木が音を立てた。木々の間から木漏れ日が指すそんな中サキは暗がりに助けを求める様に走ったのだった。

「あ!」

足下の蔓に足を取られ前のめりに倒れそうになった所を、すかさず黒いものが支えた。

「ナイス!」

サキの背後からだった。はっと霧が見た。その者は先程サキが立っていた場所にいた。

 そこにはいつの間にか周囲にある木よりもずっとずっと、高く大きな木が出現していた。半径は十メートル、高さはビル二十階建てくらい有りそうだ! 声はその木から聞こえてきたのだろうか。と、思ったら木の陰からひょっこり顔だけ現れた。と思ったら直ぐに隠れてしまった。

「その子は恥ずかしがり屋なんだ」

「!」

木にばかり意識が行っていたので気が付かなかったが、いつの間にかそれは目の前に居た。

「あなたが、言ったの?」

かろうじて、声が出た。

「あの子は大丈夫?ちょっと驚かせてやろうって思って、つい出来心でやってしまったんだ。予想以上な反応ぶりだったから、ちょっぴり焦ったけど大丈夫そうだね、良かった。
あれは完全にこけたと思ったんだけど、すごい立て直しぶりだったね。倒れた!と思ったら、操られるようにすっと立っちゃったんだもん」

と、やっと口を閉じた。見事なマシンガントークだった。見た目はサキよりも少し上の少年という所で歳は十歳くらいだろうか。

 何事かとサキが来た。

「あ!さっきはごめんね、よくここへ来てくれたね。ちょっと話が有るんだ。来て」

と言いおもむろにサキの右手を掴みぐいぐい引っ張ったが

「痛い、痛いっ!ちょっと待ってよ!」

と言い思い切り振りほどいた。

「どうしたの?」
少年の顔は笑顔のままだ。

「そんな事言われたってこまるわ!知らない人に着いていってはいけないって、おかあさんに言われたもの」

少年は目を丸くした。
「偉いね。僕とは正反対だ」

と言い、突然顔をしかめた。

「じゃあ、ね」

「え?」

「え?だってあそこに来てくれないんでしょ?近いのに…」

と言って、先程の大木を指差した。

「ずっとこんな所で立ちっぱなしは疲れるから、僕帰るね」
 そして、最後に

「ここら辺の花は凶暴なんだ、さっきだって君、つるにつまずいただろ。そのまま引き摺られて喰われても可笑しくなかったんだよ…。今は命令で大人しくしなきゃいけないんだけれど、そんな事気にしないやつも居るから…」

少年は内心ほくそ笑んだ。しかし…。

「そう」

と言う言葉一つにサキは少年とは反対の方に歩いた。少年は慌てていった。

「待って!悪気があって言ってみただけなんだ、帰らないでくれよ。お願いします!行かないで!これから知り合いになろうよ」

「まあ」
と霧が言った。

サキはピタッと足を止め振り向いた。にっこり笑って「私の勝ちね」と、言った。

「む。…まあいいや、僕の名前はパック。君の名前は?」

「サキよ」
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