小説
□静寂の中で…
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遥か彼方、海の向こうから、バサバサと何かが飛んで言った。
渡り鳥だ。それらを港から見上げる少年。そしてその少年を見下ろす渡り鳥に紛れたある黒い者が降りて来た。
少年に向かって…。水平線は夕焼けに染まっていた―。
――――。
屋台、屋台、屋台。辺りは笛の音が、太鼓の音が、辺り一杯に響き渡っていた。焼そばの屋台で五歳くらいの男の子が背伸びして必死に焼そばを取ろうとしていた時だった。
「僕にもちょうだい」と一人の少年が片手を握りしめつつやってきた。
「あいよ!」と、屋台のおじさんは言い。
「ちょっと待っとくれい」と言いつつ焼そばの入ったパックを袋にいれ、先程の男の子に優しく渡してあげた。「あちぃから気をつけて持てよ!よし!――で、お兄ちゃんはいくつだい?」と言った。屋台の人とはいえ中々の威勢だ。しかし、少年の顔はあちらを向いていた。
「おい。――おい!いらねぇのかい!?」
ようやく少年が振り向いて言った。
「あっ!ごめんごめん!三つ、下さい」と言った。少年は微塵も悪くは思って無いだろうが、既に少年の後ろには塊が出来ていた。
―。ふうふうという息づかいが聞こえた。少年は人通りの多いところを避け、人気の無い駐車場の一角に座っていた。もう一人居た三十くらいの女性であった。
「ああ。疲れたー」
如何にも、疲れましたと言う声。ぜいぜい声だった。そして……。「焼そばありがとう。危うく過労死するところだったわ」
「構いませんよ。僕も、貴女の気持ち良く分かりますから」
思わず箸を落とした。少年はニコニコ笑っていたが、少し曇った。
「あれ、それをわかってて近付いて来たんじや無いの??」
「……貴方。同類、なの?」
お互い同じタイミングで質問をした故に、数分の沈黙が経った…。
女は二つ目の焼そばに取りかかった。
「ほっかほっかぁー、はからふぐひひうほほひひへふへはほへー。ほふひへほほははひはひひほほほっはんはー」
そっかそっかー、だからすぐにいうこときいてくれたのねー。ものわかりがいいとおもったんだー。――と言っている。無論少年の頭の中は、はてなで一杯だ。