小説

□風という名の…
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 ドカッ!
 何かがぶつかった!―――人気の無い静かな世界の中、彼に見えない何かがぶつかった。振り向く刹那それは向かって前方、奴からすれば後方約五十メートルを…(消えた!)一っ跳びで移動した…のだが。
「消えた」
次は声に出して言った。そう、それは消えたのだ。
 それは足が地に付くか付かないかの中場に突如消えた…。
 慌ててその地点に走り辺りを見回すが案の定見付からない。既に闇に紛れてしまったのだろうか。
 空を見た。
 星が輝いていた。
 風は…冷えきっている。
 深呼吸をすると金木犀の香りが仄かにすると同時に寒さという名の痛みが鼻腔を突いた。つい三時間前まで雨が降っていた為か地面はぬかるんでいた。
 何の変わりも無いいつもの夜だ。
「?」
汗だと思っていたが、妙に背中が湿っている気がした…。
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