小説

□ダブルデート【逆転裁判】
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とある日常。とある朝。そのお客は、突然、やってきた。

ピンポーン!
朝早くに、その鐘は鳴った。
お客だろうか?僕は、ドアノブに手をかけ、ドアを開けると、そこには、珍しいお客が立っていた。
「御剣じゃないか!どうしたんだ?こんな朝早くに?」
「失礼するぞ…」
と、挨拶も無しに御剣は、事務所に上がり込んだ。
「おい、御剣!」
「どうしたんだ?御剣?そんな、難しい顔をして…」
僕は、早々に椅子に座るも、難しい顔をし、テーブルと睨めっこしてる御剣に、心配そうに、声を掛けた。
「む、いや、ここには来たが、君に話すべきか迷ってる。」
「どうしたんだよ?話してみようと思ったから、ここに来たんだろ?」
「む、それはそうだが…」
「聞いてやるから、話してみろって」
そう言うと、重い口が、ようやく現状を話し出した。

「…実は、今朝、ポストの中にこの様な物が入っていたのだ」
そう言って差し出されたのは、一通の手紙。
「これは…手紙?」
宛名はあるが、差出人は書かれていなかった。
「中は、見たのか?」
「あぁ」
「中、見てもいいのか?」
「あぁ、頼む」
僕は、すでに開封されている封筒から、一枚の手紙を取り出した。
「…本日、昼2時、遊園地入口にて待つ。 狩魔 冥…」
そう達筆かつ端的に記されていた。
「これって…」
間違い無い、これは…と言いかけたその時!
「デートの誘いですね!」
と、座ってる僕の右肩からひょっこり顔を出して言う、一人の女の子。
「真宵ちゃん!」
「これは、どう見ても、デートのお誘いだよね!ね?なるほど君!」
「やはり、そう思うか?成歩堂」
「あぁ、そうだな」
「そうか…しかし、私は、この長い間、デートと言うモノをした事が無い。しかも、相手は冥だ。どうすればいいかわからん」
御剣は、検事の仕事に追われていた為、プライベートでの、そう言う時間には全くの無縁だった。

「でも、冥ちゃんだって、女性なんだから、他の女性と同じ様に接すれば大丈夫ですよ!ね?なるほど君!」
「まぁ、確かに変わってる子だけど、大丈夫だと思うよ!」
「だが、私には、自信が無いのだ」
「じゃあ、こうしましょう!私となるほど君も一緒に行って、ダブルデートにしたら良いんじゃないかな?」
「ダ、ダブルデート!?」
「それは、良いアイデアだ!是非、お願いしたい!」
真宵ちゃんの提案に賛同する御剣とは逆に、僕は困惑していた。
「ちょっ、御剣も待ってくれよ!ダブルデートだなんて!」
「恥ずかしいの?なるほど君?」
「は、恥ずかしいよ!」
「大丈夫だよ!いつも通りにしていれば。」
「いつも通りにって…」
「さぁ!そうと決まれば、早く、出掛ける用意をしましょ!」
そう言うと、僕の困惑をよそに、さっさと出掛ける準備を始めるのだった。

事務所を出て数時間後、成歩堂達三人は、狩魔冥が待ってるであろう、遊園地に来ていた。

僕は、腕時計を見て、時間を確認した。

昼の1時50分。もう、冥ちゃんは来ているだろうか?

「あ!なるほど君!」
「どうしたの?真宵ちゃん?」
「あそこに居るの、冥ちゃんじゃないかな?」
真宵ちゃんが指差す方を見てみると、遊園地の切符売り場のすぐ横に、青い髪のショートヘアーの女の子がムチを片手に立っていた。
「…あれは、間違いなく、冥ちゃんだね…。」
「じゃあ、行きましょうか!御剣さん!」
「む…あぁ」
いつも以上に固い表情の御剣。

大丈夫かなぁ。

法廷では見せた事が無い、自信の無い表情を見せる御剣を僕は心配していた。
そして、もう一つ。そんな心配をよそに、楽しそうに歩く真宵ちゃん。
このデートの主旨をわかってるんだろうか?

「ほら!二人とも早く〜♪冥ちゃんが待ってるんだから!」

…不安だ…。

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